視覚の涼 <蓴菜(じゅんさい)のお話>

蓴菜は、簡単に「順才」などと書いたりしますが、この字を書くのが我々の若い頃からの和食の世界での習慣です。

 

ヒツジクサ科の宿根草で、漢名で「蓴菜」、古くは「ぬなは」(沼縄の転)と呼んだとのことです。

 

言わずと知れた、水草中の珍味で古い池沼などに多く自生し、光沢のある葉を浮かべて可憐な紅色の花を覗かせたりします。

 

この食材の最大の特徴は、若い葉や芽にゼラチン質の粘液に包まれていること。

 

他の動物などから身を守る自然保護ですが、箸からするっと抜けていく蓴菜には大いに納得させられるところです。

 

 

 

産地での食べ方といえば、きれいな水で洗って、そのまま二杯酢や三杯酢で食べることが多いと思います。

 

我々の間では、沸かした湯に差し水をして温度を抑えた湯にくぐらせて氷水に落とす。

 

そんな下処理をしてから酢の物に仕立てます。

 

がんがん沸いている湯にくぐらせると、せっかくのゼラチン質が落ちてしまう。

 

長年の日本料理の世界に伝わるノウハウです。

 

蓴菜や水をはなれて水の味   正秀

 

 

蓴菜は、その物の味わいを楽しむというよりは、清々しい色合いと舌触り、のど越しを楽しむ食材です。

 

最近では甘味に使う職人も多くなりました。

 

シロップなどにも、よく合う・・・独特の食材です。

 

蓴菜料理で、視覚の涼を楽しむ。

 

こういう一品は、空調の効きすぎたところでは、美味しく感じないです・・・

と言うのは、冷房のない家に住む武内の負け惜しみでしょうか (笑