悪戯心 <辛口の酒>

樂旬堂・坐唯杏の前身、「割烹・坐唯杏」時代の出来事です。

 

何度かお見えになっているお客様で、辛口のお酒が大好きな方がいらっしゃいました。

 

あるとき、何名かのお連れ様と共にご来店下さいまして、いつもの様に辛口のお酒を・・というご注文です。

 

当時、坐唯杏で扱っていた「三千盛」や「鷹勇」などをお出ししましたが、どうも納得のいかないご様子。

 

お連れの方は、そのお客様を取り巻いている取引先の方か、部下の方たちのようで、辛口・辛口と連呼してくる。

 

ちょっと、悪戯心がむくむくと湧いてきまして、「ならばこれは」といって日本酒の徳利に米焼酎を入れてお出ししました。

 

 

米の粕取り焼酎でしたから、仄かに日本酒に近い香りもあります。

 

その焼酎を、日本酒だと思ってお飲みになり、「あるじゃないか」の一言。

 

次は、日本酒とサワー用の安い焼酎を割って、お出しすると、またまたことのほか喜んで、くいくい飲んでおりました。

 

辛口の酒って、結局はアルコールのピリピリした感覚が感じさせるもの。

 

そう認識したのは、この出来事からです。

 

今でも、辛口・辛口と連呼するお客様には、少しだけ焼酎を出したくなる自分もいますが、今は悪戯はしません。

 

確かに完全発酵したきりっとしたお酒は美味しいです。

 

 

 

でも、そのお酒も甘味や酸味、数多くのアミノ酸による複雑な旨味で構成されていて絶妙なバランスで成り立っています。

 

ただただ、一点のみ「辛口」に固執する味わい方。

 

あのお客様も、卒業された事を願っています。