集中すべき事 <職人の仕事>

人間でなければ、出来無い仕事と言うと、やはり素材との会話、これに尽きるかなと思います。

 

例えば、少し鮮度が落ちていて、身が緩くなっている魚なんかだと、いつもの一定量の調味料で煮物に仕上げると、身が崩れて盛り付け出来ない事があります。

 

炊く前に、素材を見極め、酒の量を減らし、味醂の量を増やすとこう言う身の緩い魚でも、身が崩れる事無く仕上げられます。

 

それも、長い経験でどう言う魚の状態が、どういう仕上がりになるかを判断出来なければ調整は出来ません。

 

他には、やはり刺身で身の弾力が強い、その日の活け締めでしたら、薄く薄く造ります。

 

よく、若い者に1人前の刺身は何切れ?と訊かれますが、基本では7貫ですが・・・実は決めていません。

 

 

1人前に適した量を、その魚に適した切り身で提供する事が大事で、何枚に造るかは、その後の問題、又は全く関係の無い問題だからです。

 

活け締めの、弾力の強い身の時は、武内が刺身を造る場合、10枚以上、1人前に盛り付けられえている事もあります。

 

それは薄く薄く造るので、1人前の量にした時に何枚かは関係ないと言う分かりやすい例です。

 

他に人間でなければ出来ない事と言えば、予測にまつわる事でしょうか。

 

素材に対してどう言う処理をして、時間が進行すれば、どう言う仕上がりになるかを正確に予想する事、

 

または予測に基づいて処理を決め、目標通り、仕上がりの予測通りに仕上げる能力、

 

 

膨大なデータを瞬時に取り込み、幾通りもの中から最適な処理方法を選択し、途中で処理方法を修正しながら、その場面ごとに選択肢の中から最適な処理方法を選択していく能力。

 

もちろん、様々なデータを取り込む能力を搭載したコンピューターで、瞬時において計算し、熟練の職人が判断するのと同じ計算式を演算させる事は可能ですし、それを実行するロボットを作り上げる事は、今の時代なら充分に可能だと思います。

 

でも、それをほぼ瞬間的に、勘と呼ばれる感性だけで判断し実行できる職人の存在意義も、これからの時代でも、充分に必要とされるものと信じています。

 

こう言う事を書くと、機械での作業や処理を全く否定しているかの様に感じるかもしれませんが、実は武内は肯定派です。

 

 

便利になる所は、ドンドン便利になれば良いと思っていますし、少しでも綺麗で早く出来る方法があれば、躊躇無く昔からのやり方を止める判断をします。

 

でも重要なのは、その分、人間にしか出来ない事に集中するべきです。

 

厨房の人間も、お客さまとのコミュニケーションを取ったほうが良いに決まっていますし、また先に書いたような職人にしか出来ない事を研ぎ澄ましていくべきです。