基本は基本 <厚削りのお話>

坐唯杏・別館が、まだあった頃、

 

ソーダ鰹と鯖の本枯、しかも厚削りのみを使って、出汁を仕立てていました。

 

本枯の削りは、乾燥からカビ付けされて熟成期間を長く取って、さらに乾燥を進めるという製法で作られますが、現在・・流通している削りの中では、ごく一部と言う高価で貴重な、素材になっています。

 

ソーダ鰹とか鯖節では、余り、そういう感覚はないかと思いますが、鰹の本枯と言えば、最近では使えるのは、ごく一部の高級料亭のみ、そんな感覚です。

 

坐唯杏でも時たま、本枯の削りを仕入れて、出汁の味わいのみを

存分に味わって頂く様な吸物を仕立てる時もありますが、普段使いの鰹には、荒節と言われる、カビ付けの処理を施さない素材が多いです。

 

さて、普段、よく目にするのが薄く削った削り節だと思いますが、蕎麦屋で使う削りは、厚削りを使う事が殆どです。

 

武内が子供の頃なんかは、厚削りで出汁をとって、更に乾燥させて2番出汁を使う、なんて事も多かったように感じます。

 

 

蕎麦屋の裏手に回ると、必ず厚削りが、盆ザルに広げて干してあったのを思い出します。

 

現在の別館では、2番出汁は使っていませんが、1番出汁には1番出汁の2番出汁には、2番出汁の使い道と言う物があります。

 

厚さが2~3mmぐらいかな、そんな削りですから、1回で全ての旨味を抽出する事は、不可能に近い事もありますが、2番出汁は、ただ旨味が薄いだけではなく、柔らかな味わいと優しい風味が特徴です。

 

と言うのも、厚削りの出汁は、普通の薄い削りに比べたらインパクトがとても強いです。

 

旨味も、物凄いですが、実は嫌な味わいも多く含まれていて、出汁を引く時の温度管理を誤ると、とてつもなく不味い出汁に成り下がります。

 

削りが湯に浸かった状態で温度が下がると、一気に渋みや酸味といった旨味以外の味わいが湯の中に滲出しまして、とてもじゃないけど、呑めた出汁ではなくなります。

 

蕎麦の職人の中には、嫌な味わいも鰹の味だ・・・なんて、嘯いている方も居られるようですが、和食の世界では、駆け出しの若い衆でも、そんな出汁が使えない事を知っています。

 

 

 

それぞれの修行の成果を、表現する場が店ですから、何に重点を置くかは、職人によって変わっても良いとも思いますが、基本は基本。

 

きちんと引いた、旨味・豊富な出汁で、もちろん嫌な味わいも感じないピュアな鰹、鯖の味わいを知ったら、もう戻る事は出来ません。

 

まぁ、ぜひ、今度蕎麦屋の暖簾をくぐる時は、そんな事も考えて、出汁を吸ってみて下さい。

 

また、新たな発見があるかもしれませんよ。