挑戦の価値「大」 <干物のお話>

武内が板場の世界に入って、初めての厨房では、親方の好みで良く干物を作っていました。

 

キンキやカマス、と言った高級魚ばかりでしたが、そのシンプルな製法には、ショックを受けました。

 

と言うのは・・こんなにも単純で、ありふれた調味料だけなのに、市販の干物にはない、とっても美味しそうな仕上がりになっていったからです。

 

キンキやカマスの干物など、それまで見たことも無かっただけに初めて見る、それらの魚にもショックを受けたのかもしれません。

 

入ってすぐに、穴子や鰻を教えてくれた先輩も、焼魚にする魚には触らせてくれなかったのが、憧れを強めたって言うのもあります。

 

それでも半年・1年と続けるうちには、カマスやキンキの仕事も教えて頂きまして、干物を仕上げる行程にも参加する事が出来ました。

 

 

 

以来、折に触れ干物に取り組んできましたが、やればやるほど奥は深いです。

 

シンプルな製法だけに、ちょっとした微妙な差が、出来上がりに影響しまして、塩分の塩梅だけでも、季節によって全く違った印象に仕上がります。

 

と言うことで、干物の作り方ですが、簡単に言えば魚を開いて、塩を当てて干す・・・だけです。

 

魚によって開き方を変えて、仕上げます。

 

それは市販の干物を見ればカマスと鯵や鯖なんかでは、全く違う開き方をしているので、すぐに理解できると思います。

 

 カマスは背で開いて、鯵や鯖は腹から開きます。

 

坐唯杏で開く時は、わざと市販の干物と区別できる様に、鯵を背開きで仕上げてみたりもしますが、基本的には市販の製法を真似る方が良さそうです。

 

背開きの魚は最初に腹を開けて、水洗いと言う行程が無いので、開いたら、水洗いをしつつ、内蔵や鰓を掃除します。

 

その時に血合いなんかも丹念に取り除き、しっかり洗い上げたら水分を拭き取ります。

 

 

その後、塩を当てるか、もしくは海水程度の塩水に漬けます。

 

この塩水を「たて塩」と呼びますが、こちらの方が均一に中心部分まで塩分が浸透するので、仕上がりは良いようです。

 

この行程を水ではなく、酒で仕上げる時もありますが、もったいないです(笑 

 

味は格段に良いようにも感じますので、糸目をつけないって言う方は挑戦してみると良いかもしれません。

 

その後、さっと水洗いして干すのですが、常温で、しかも夏場に放置するのは、少し勇気が要ります。

 

ここで、いつもの浸透圧脱水シート、ピチットシートの出番です。

 

別に、武内は昭和電工の回し者ではありませんが、以前dancyuで、このピチットシートを紹介した時は、営業の方が挨拶に見えたと言うことは、

ありましたが。

 

とは言え、冷蔵庫にしまっておいて、脱水できるのですから、菌の繁殖を抑えられると言う点では、安心できます。

 

そして水分がある程度、抜けた時点でさっと風に当てて仕上げる。

 

 

 

素材の塩分濃度がある程度上がって、均一化していればそれだけでも菌の繁殖には抑制がかかりますから、昔のように最初から最後まで干して仕上げるより、ずっと精神的は良いです。

 

こんなやり方でふっくらと干しあがった魚の身を見ると、すごく美味しそうに感じます。

 

最後は風に当てるのも良し、天日に当てるのも、オススメですが高層マンションの上のほう以外では、東京では干すところは限られてしまいますね。

 

それでも挑戦する価値は大です。

 

ぜひとも、新鮮な魚が大量に手に入った・・・なんて言う時には「干物の仕事」、お試しください。