風なくして・・<独活のお話>

和食の料理人になって、最初に苦しむ事と言えば、体力的なことや仕事に対する技術的なことよりも、武内は献立が読めない事でした。

 

難読の漢字ばかりで、読めない・・。

 

武内が和食を志した理由のひとつが、日本語で勉強できる事だったのでさすがに、甘くないのを痛感しました。

 

その難読漢字で、最初に出会うのが「独活」かもしれません。

 

独活は、他にも「土当帰」と書いたり、「独揺草」と書いたりもするそうですが、殆ど、見ることはありません。

 

その名前の起源については、中国にあります。

 

 

中国の古書「呉氏本草」によると、

 

「うどの花は風あるも風に揺るがず

 風なくして独り揺らぐ」

 

・・とあり、独り揺らぐさまが、まるで動物のように生きているようだとのことで、つけられた名前との事です。

 

普通に独活と呼ぶと栽培種の軟白栽培された物を指し、山独活とは区別しますが本来は同一種で、実生・株分け・挿し木などで株を育て、伏せこみ・溝・穴蔵・小屋がけ・盛り土などを利用し、通風と光線を遮り、芽を伸ばし根株を軟化させるのが栽培方法です。

 

とは言え、やはり山独活の方が鮮烈な香りを有し、歯応え・味ともに優れていますがその分、灰汁も強く酢水に浸して灰汁止めをしてからでないと、なかなか食用となりません。

 

 

また栽培の歴史も古く、江戸時代にはすでに江戸周辺に尾張から技術を伝えて現在も全国の生産量の、約7割が東京周辺で作られています。

 

山独活のどぎつき青の一束

山ふかき土のやみがたきかな

 

  <坪野哲久>

 

と言うのが、栽培種と自生の山独活の差ではありますが、実は最近の山独活は栽培されているものです。

 

本来の栽培種と自生種の中間的な存在と言うのが、栽培種の山独活。

 

素材によって仕立て方を変えること、作りたい料理によって素材を選ぶ事。

 

独活という素材に求められる事です。