目玉が告げる春 <鯛の巻繊焼>

樂旬堂・坐唯杏の献立では度々、登場する焼物。

 

難しい読みの漢字なので、職人仲間でも、そうそう簡単に読める・書けると言う者は、多くはありません。

 

 

「巻繊焼」のお話をお伝えしましょう。

 

「巻繊焼」で「けんちんやき」と読みます。

 

聞いてみれば、けんちん汁などで、身近な料理、ありふれた名前ではありますが、漢字にすると、なんだか遠い存在に感じます。

 

巻繊と言う料理は、元々は中国伝来の卓袱(しっぽく)料理のひとつです。

 

卓袱料理自体、東京にいると、さほど馴染みはありませんが「卓袱」と言う漢字はテーブルとテーブルクロスを表していて、円卓のテーブルに大皿・中皿・小皿の料理を並べてお出しするスタイルから名づけられたものです。

 

 

その卓袱料理のひとつ、巻繊焼は細切りにした材料を、崩した豆腐と共に油で炒めて、下味をつけた後、湯葉や薄焼きの玉子で巻いた物です。

 

巻と言う字は、そのまま巻く事を表し、繊は細く刻んだ切付を表しています。

 

つまりは細く刻んだ材料を巻いた物と言う意味で、我々が仕立てる焼物などを見て頂ければ、一目瞭然・・その名前の由来通りと言う仕上がりです。

 

樂旬堂・坐唯杏でよく仕立てる巻繊焼は、鰆や甘鯛、真鯛を使って崩した豆腐と細切りの野菜を和えた物を巻き、蒸してから小口から切り付けて焼いた物です。

 

魚の包丁も、一定の厚さを保ちながら、観音開きにして薄い塩を当てたら、しばし置きます。

 

豆腐と野菜、筍や牛蒡の笹がき、人参、木耳を繊切として崩した豆腐と和えて、きちんと形がとれる様にすり身を少々加えて片栗粉を打ちながら巻スで締めます。

 

 

そのまま、蒸し器で2~30分ほど蒸して転がしながら冷ましたら、真ん丸に形が決まります。

 

それを切り口が綺麗に出るように、厚みを持たせて切り付けて、切り口に、もう一度油を塗って焼きあげます。

 

魚の旨味を吸った豆腐の優しい味わい。

 

春のコースメニューの、目玉として仕込んでいます。

 

1990でご用意するコース料理に、天然真鯛なんかを使っていて良いのか?

 

と言う疑問は、ありますが。