ひとりより、ふたりの肴 <兜焼>

「兜」と言うと、やはり真っ先に思い浮かぶのは鯛の兜ではないでしょうか。 

 

武内、修行時代には、ひたすら鯛の兜を割っていた時期がありまして、兜割人形の異名を頂戴していました (笑 

 

もう、あの頃の婚礼場やホテルと言ったら、全盛期だったかもしれません。 

 

大安の日曜日、なんて言うと、その前の日の土曜日に鯛の頭を落とした、身だけの鯛が飛ぶように売れていたのです。 

 

だから二束三文で、頭は売りに出されていて、1個・¥100なんていう安い頭を大量に仕入れては、コースの煮物で鯛の兜煮や、叩いてアラ煮として提供していました。

 

 

 

 

トロ箱に何段も重ねられた、鯛の頭。 

 

整然とトロ箱の中に並んでいますから、20や30はある、って言うのが

何段もです。 

 

さすがに、気が遠くなる日もありましたが、当時の武内はパワーだけで生きていましたから、腕がパンパンになりながらも、鱗を掻いて、真っ二つに割って、鰓を取り、湯通しして更に鱗を掃除する、なんていう作業を延々とこなしていました。 

 

1日に200枚とか300枚とか割った日も、少なくなかったです。 

 

まぁ、そんな日を経験したからこそ、今の武内があるわけで、仕事が出来た環境に、今では感謝しています。

 

 

 

さて、話が逸れましたが、その割った兜の鰓を取って、よく水洗い

したものを、串を打って焼くのが「兜焼」です。 

 

もちろん、鯛の兜焼きなら文句なしで美味しいのが出来上がりますが、その仕上がりは鯛にもよりけりで、もう焼いていて、これは旨そう、なんて言うのもあれば、この鯛は?、、なんて言うのもあります。 

 

それはそれで、自然の物なんで仕方の無いところですが、刺身用の鯛を熟成させた物が、やはり旨そうですね。 

 

サイズが小さいのは、武内の好みではありません。 

 

骨離れがよくなる、大きいサイズが食べやすく、身のパワーもあります。

 

 

さて、鯛の事ばかり書いてしまいましたが、他の魚でも美味しい魚はあります。 

 

例えば、鰆、さわらと読みますが、大きなサイズの鰆の兜焼きは絶品です。 

 

酒と醤油の割り醤油を掛け焼にして、最後に叩き木の芽なんか散らしたら、もう焼いていて我慢できないくらいです。 

 

鰆は身が柔らかく、卸すのが大変難しい魚ですが、さすがに骨だらけの頭は崩れることはありません。 

 

 

 

骨に包まれた柔らかい身に、味わいがぎっちりと詰まっている感覚です。 

 

舌の上でとろけるような、味わいが楽しめますね。 

 

他には、ブリ。 

 

大きなブリの頭を豪快に焼くのも良し・ですが、ここは少し謙虚にイナダの頭にしてみます。 

 

2kgから少し上ぐらいのイナダで、カマの下にたっぷりと身をつけて頭を外し、真半分に割ります。

 

鰓も鱗も、充分に掃除して、しっかり内側も水洗いした物を、きっちりと水分を押さえて、塩焼きの時は酒塩で洗って、タレ焼きの時は醤油で洗って、焼き始めます。 

 

あっ、もちろん塩焼きの時は焼く前に塩を振りますよ。

 

ちょっとカリカリする様な大粒の塩が良いかもしれません。

 

坐唯杏では、伯方の塩のフルールドセルなんて言うのを使う事も多いです。 

 

結晶が大粒なので、食べた時の食感にカリッとした味わいもプラスされて、そこから塩分が身に回るんですね。 

 

 

 

 

銀座のバードランドの和田さんの、塩の使い方を参考にさせてもらって、使い分けるようになりました。 

 

さて、串の打ち方は、少々コツがあって、カマの下の所から鼻の穴に抜ける様に打つのが良しとされていますが、慣れないと厨房の中でも、スムーズに打てる人間は少ないです。 

 

天火の時は裏から焼き始めて、表を焼いて仕上げるのが綺麗に焼けます。 

 

塩焼きの時は、たっぷりの大根おろしを添えて、柑橘系の絞り汁をキュッと絞って・・・、あぁ、やっぱり骨に近い身は力があるんだなぁ、なんて言うのを実感しつつ、燗酒をちびり。 

 

う~ん、想像しただけでも・・・。

 

ただし、こう言う料理は決して1人では注文できないのかもしれません。

 

酒飲みの友人、同じ嗜好の友人は、こう言う時に大切さを感じます (笑