鱧の骨切り物語 <包丁を使う感覚>

魚の中には、季節的には全然早いけど、敢えて早めに始める素材があります。

 

その代表格とも言えるのが「鱧(はも)」です。

 

なんせ前年の秋から、鱧には触りませんから、少し勘を取り戻すのが

必要なのです。

 

30年、ウナギを割いている職人が1日休むと、勘が狂う・・なんて言ってましたから、和食の季節ごとの仕事には、こういうリハビリ期間も必要な事かもしれません。

 

 

さて、鱧と言えば骨切りですが、この時に1番、大切な事が包丁を使う感覚です。

 

 

 

薄く、薄く、しかも真っ直ぐに包丁を正確に入れる。

 

そんな技術が、難しい所なんですが、その技術を習得する前に必ず通る道があります。

 

それが包丁を使う感覚なんですね。

 

刺身にしろ、野菜の切りつけにしろ、包丁を入れれば、ただ切れていくわけではありません。

 

包丁が切りながら、素材の中に滑り込んでいく感覚。

 

決して潰すことなく、また素材を割ってしまうことなく、刃が滑って入って行くんですね。

 

 

 

素材には全く負担をかけることなく、すぅ~~っと刃が入る瞬間は何度も、何度も、包丁を使って始めて体得する感覚ではないかと思います。

 

多分に抽象的な表現なんで、分からない人には全く分からないと思いますが、プロにこの説明をすると、最初は分からなくとも、経験を重ねていく上では、必ず分かる時がきます。

 

職人の間では、こういう包丁の使い方が出来る人間を

 

「包丁が切れる」

 

と、表現するんですね。

 

奴は包丁が切れる・・なんて言う言い方をするわけです。

 

 

 

そして、流れるように次々と仕事をこなして、切り口、幅、大きさに一抹の狂いもなく、鮮やかに包丁を使う職人が板前になったわけです。

 

何度も書いていますが、包丁は押しつけるだけでは決して切れません。

 

包丁を当てて、押すか引くかです。

 

この押す・引くの中に、刃の全体を使って素材に滑り込ませる様に切っていく真理がありますよ。

 

と言う事で、本日は包丁を使う感覚のお話しでした。

 

こんな事を意識しながら、包丁を使ったらすぐには変わらなくとも長い年月では、きっと切り口が格段に変わります。