駆け引きをヒモ解く <クエ仕入れのノウハウ>

ひところに比べて、ずいぶんと値段が下がったクエですが、それでもまだまだ高価な素材、高級食材と言う分類からは、決して外れない魚です。

 

築地の仲買も、わざわざ危険を冒してまで無理して仕入れる魚ではありませんが、仲買の大元から、押し付けられることがあります。

 

大体の場合は、押し付けられた魚は相場よりも安め、お得な価格で取引される事が多いのですが、クエのような高級食材だと、限りがあります。 

 

とは言え、仲買も押し付けられた品を引き受けないと、欲しい魚が優先的に回してもらえないことも考えられるので、交換条件のような形で引き受けます。

 

さて、その仕入れたクエですが高価な価格で仕入れましたから、なるべくなら高く売りたいと言うのは商売の上では、当たり前の事です。

 

そう言う時には、決して場内の店先に並べる様な事はしません。

 

得意先に口頭でオススメするわけです。

 

店先に並べると、売れ残りを専門に引き取る魚屋や、拾い買いする料理屋に買い叩かれる事があるからです。

 

 

 

そして、そういう人間たちは、ほぼ毎日・・築地市場を回っていますから、どこの店に何があるというのを把握させてしまうと、魚の売り切らなくてはいけない期限を掴まれて、交渉の材料にされます。

 

「この魚、ずいぶん売れないで残っているけど安く投げない?」

 

と言うような会話が切り出されます。

 

だから店先に出す時には、最終期限が近くなってからというのが、我々の様に築地市場で直接仕入れをしてきた人間としては常識です。

 

とは言え、クエのような大型の魚は、きちんと氷を打ってびっちりと冷やしておけば、長ければ1ヶ月以上も持つと言うパワーを持っています。

 

その期限の設定には、各仲買によってまちまちでは、ありますが・・下手をして腐臭が出てしまったら、そこでアウト。

 

その為には、もうひとつ工夫が必要です。

 

 

 

 

クエという魚は、鮮度の良い状態だと大量のぬめりが出ますが、このぬめりが匂いの出る素です。

 

だから長持ちさせようとする時は、このぬめりをしっかりと洗い流しておく必要があります。

 

普段なら、絶対に仲買はそこまでしません。

 

それが魚屋と言う仕事です。

 

我々、料理人ならぬめりを落として内臓と鰓を抜き、腹の中まで氷を詰めて保管する所ですが、それは魚屋の仕事ではない。

 

なのに、綺麗にぬめりが落とされているクエが並んでいる時があります。

 

もう、そうなると実は、いつのクエだか分からない・・・というのが、クエを仕入れる時の判断基準です。

 

確かに、これが全てではありません。

 

 

品物の回転の速い仲買もたくさんあります。

 

それでも、店頭の目立つ所にクエが置いてあって、しかも綺麗にぬめりが落とされている、そして魅力的な価格に下がっていたら、充分な注意が必要と言う事です。

 

とても、いやらしい感覚ですが、こんな駆け引きが築地市場での仕入れには必要です。

 

今は、全く駆け引きなしの仕入れができる環境。

 

ありがたく、甘えさせて頂く事にします。