身体の中の記憶 <袱紗焼>

袱紗焼の由来は、慶事の時や、着物を着た時に大切な物を包む、あの袱紗に由来します。

 

袱紗と言うのは表と裏で、違う生地で仕立てて有り、表と裏で違う仕立て方をしている料理・・焼物を「袱紗焼」と呼びます。

 

最近では、少し解釈もアバウトになり、ある仕立て方を使った料理全般に使われる事もありますが、本来は玉子や豆腐で生地を仕立てて最後に表側に違う素材や、色合い、仕上がりになる様に仕立てます。

 

樂旬堂・坐唯杏でも、今年の仕込みからは、この袱紗焼を組み入れました。

 

仕立て方としては、柔らかい煎り玉子を練っておいて、そこへ具材を混ぜ込みオーブンで焼きあげる。 

 

今年は武内が、独りで全てを担当しました。

 

実際、柔らかい炒り玉子・・・「びしょ玉」と言うのですが、この仕事を

最後にしたのは、もう230年前になるかもしれません。

 

所が、身体覚えているんですね。

 

 

 

自分でも驚くほどスムーズに、手が動き・・おそらく、この仕事をする時なら最短と思える様な時間で、実に綺麗なびしょ玉が出来上がりました。

 

オーブンで焼くのが殆ど・・と言う一品ですが、和食の焼台を駆使して

焼きあげ、試食してみましたがほぼ、構想通りの仕上がりです。

 

この仕事を良くやっていたのは、二十歳のころ。

 

渋谷の鰻屋で、前菜や幕の内弁当に入れる口取として、取り組んでいましたが、その頃の記憶が、頭の中には無くなっていても、いざ素材を前にすると身体が自然と動く。

 

人間の脳の深い所にある記憶と言うのは、素晴らしい物です。