覚悟と工夫で切る・切る・切る <御節の包丁仕事>

御節重詰の仕事をするにあたって、包丁の仕事は大変重要なウェイトを占める仕事です。

 

例えば紅白の蒲鉾、市松の蒲鉾などは同じ幅、真っ直ぐに切り付けないと全く一体感が生まれません。

 

店の中では、最も経験があり技術の優れた者が担当しないと、いざ詰めると言う時になって、泣く事になります。

 

そこそこの技術がある者が切れば、さほど難しくないと感じる方が多い事と思います。

 

とは言え、シンプルな切り付け仕事の方が、その差は歴然です。

 

駆け出しの若い者に、蒲鉾などは絶対に切らせてくれないのが和食の世界です。

 

 

他にも長芋の切りつけなどは、刃の厚みがある包丁だと割れてきて、きっちりと長さや幅を揃えたつもりが、後から端の方が割れてきて往生する事になります。

 

過去に於いて最も、切り付け仕事で問題になったのは、年もいった経験もある職人に切らせた紅白の膾・・・大根と人参です。

 

御節仕事と言うのは、ある種独特の仕事で経験がある・・と言う者でも

やらせてみると素人同然などと言う事が、多々あります。

 

この時もそうでした。

 

普通の賄や、ランチの豚汁あたりに使うように気軽に大根と人参を切り付けて打ち損じ・・つまり、完全な直方体になっていない切り付けが沢山混じる、仕上がりだったのです。

 

 

 

その時の武内は若かったので、目の前で全部捨てました。

 

今なら、賄や漬物に転用する所ですが、「こんな物使えるか!」と怒鳴って、そのままゴミ箱へ。

 

今思うと、非常に大根には申し訳ない事です。

 

とにかく、御節の包丁仕事には魚の切り身を切り付ける、寄せ物や流し物を切りつける時の様な、真剣な感覚、几帳面にキッチリと揃えて正確無比に同じ大きさ、太さ、長さを実現する覚悟が、細々した物にさえ必要です。

 

その為には専用の定規を自作したり、丸い物ならきっちりと四角に木取ってから切りつける事を臨機応変に工夫する。

 

 

 

御節の包丁仕事には、まずは覚悟。

 

そして工夫。

 

どんな仕事でもそうですが、さらに強く要求されると言うお話でした。