地味に咲く煮物 <松笠のふた品>

松笠のふた品・・と言うお題ですが、今年のお節はお値段によって中の品を作り変えていますので、かなりの品数になります。

 

例えば、昆布巻きをニシンと穴子で作り分けたり、鰯の辛煮と子持ち鮎の飴炊きを作り分けたり・・

 

他にも、伊達玉子と袱紗焼きとか、鳴門穴子と穴子けんちんなどなど。

 

その手間は、ほぼ二倍となりますが、今年のお節を計画した時点で覚悟して居たことです。

 

その中のふた品を仕立てる煮物に、「松笠床節」と「松笠鶏」があります。

 

床節は<とこぶし>と読みまして、小さな鮑の様な貝です。

 

 

殻から外して肝を取り除き、丁寧に包丁目を入れて茹でて、蒸して、そしてじっくりと炊き上げるという坐唯杏のお節の中では、過去にも何回か詰めた定番の一品です。

 

鹿の子に入れた包丁目が綺麗に開き松笠の様に見える事から、この名があります。

 

対して、松笠鶏は今年初めて挑戦する一品ですが、手順はほぼ同じ。

 

使う素材が床節から、鶏のハツに変わります。

 

適度な歯応えをもつ鶏のハツですから、床節に決して引けをとらない面白い仕上がりになるのを確信しています。

 

あとは、いかに精神力を持続させて綺麗な包丁目を入れられるか。

 

その一点だけが、この料理に課せられた、我々の使命です。

 

綺麗な包丁目さえ入っていれば、あとはしっかりと柔らかく、味を含ませるだけ。

 

ランダムに埋められたお節の煮物、吹き寄せと言う詰め方の中に、この松笠はよく映えます。

 

地味ですが、入ると入らないでは全く印象が変わる根気の仕事。

 

それが松笠のふた品です。