バランス美の食べ頃 <海老の姿煮>

「偕老同穴」と言う言葉があります。

 

「かいろうどうけつ」と読みますが、意味は夫婦が仲良く添い遂げる事とあります。

 

実は、この言葉・・ある海綿状の生物を指しています。

 

そして、この生物の中には、しばしば「ドウケツエビ」と言う海老が

つがいで住んでいる。

 

そして「かいろう」と海老をかけて、夫婦が共に年を取り、最後の瞬間まで仲睦まじくという願い込めて、海老は縁起物とされています。

 

そして、あの色合いは和食の素材の中でも特に秀逸な美しい色目です。

 

 

あの赤い色が、御節の中に入るとぐっと華々しく感じます。

 

そう言う意味合いで、伝統的に頭つきの海老を姿で煮物にしたり合わせ酢に漬けた物を御節の中に詰めます。

 

仕立て方は、シンプルです。

 

最初は茹でて、火を通しておいた海老を煮汁で炊き上げるだけ・・・ですが、その煮汁や火を通す加減に、色々なテクニックがあります。

 

しっかり甘味をつけて濃い煮汁で煎りつける様に炊いたものを艶煮と言います。

 

 

薄めの煮汁でしっかりと中まで含め煮にする時は、茹でる時間を短くして湯通し程度のところから炊く方が味がよいです。

 

いずれにしても、海老の頭にはタール質がありますから、甘い火の通し具合だと頭の中が真っ黒になり、色合いを愛でるどころか醜悪な存在になります。

 

御節の煮物の場合は、かなり火を通すことが多いので滅多に無い失敗ですが、慣れない者に、下茹でを任すと一切使い物にならないと言う惨事が起きます。

 

2017年の最初の食卓を飾る二種類の御節重詰にも、車海老とブラックタイガーの二種類の海老の姿煮を詰めます。

 

でも我々が考える、海老の存在はあくまでも縁起物。

 

 

美味しく食べるなら、火の通し過ぎまで煮てしまった海老ではありません。

 

それこそ、カウンターの割烹で煮てすぐに食べる、そんな海老の煮物が理想です。 

 

丁度良い茹で具合で煮汁と共に真空パックにかけて煮汁を吸い込ませ冷凍した上で、凍ったまま御節に詰める・・・そんな仕事も流行っていますが、我々は伝統的なレシピで仕上げます。

 

炊き具合、味の入り方、色艶、そして盛り付けたときの存在感。

 

いろいろな要素を、兼ね合いを見ながらバランスをとって仕上げる海老の煮物。

 

見た目にも主役の存在です。