漆黒の艶・クライマックス <お多福豆>

お多福豆は、大きな蚕豆・・<一寸蚕豆>と言う豆をじっくりと時間を

掛けて炊きます。

 

この大きな豆は、その昔は日本でも栽培されていましたが、今では・・ほぼ、輸入物に頼っている状況です。

 

世界各国での蚕豆の生産量がダントツに多いのは、やはり中国なのですが上質な豆を探すとヨーロッパ産が優れています。

 

我々が使う豆もポルトガル産の一寸蚕豆を使用します。

 

この豆、実は非常に炊くのが難しい豆です。

 

築地市場の豆屋さん、塩田さんのご主人によれば、お多福豆を炊くのにこの一寸蚕豆を仕入れていくのは都内では3軒の店しかないとの事。

 

 

それほど、希少な仕事ですし、職人も避けて通りたい難解な行程です。

 

それでも我々が毎年、挑戦するのは年々、その完成度が上がっているからです。

 

最初の年は、完成はしたものの完成品の3倍ほどの失敗作で山が出来ました。

 

もちろん潰して餡に仕込み、デザートなどに転用しますが実に高いデザートとなってしまいます。

 

それが昨年あたりは、武内がつきっきりで仕上げたこともあり、ほぼ9割がたの豆が破れず、しかも柔らかく、上品な甘味をしっかりと抱え込んだお多福豆となりました。

 

黒光りする様な、美しい光沢に充実感が満載だったのが思い出されます。

 

武内の場合、殆ど豆の仕事には重曹を使わず、時間をかけてゆっくりと柔らかくしていましたが、この豆だけは重曹なしでは仕上がりません。

 

重曹を加えた湯で、芯までふっくらと戻して小分けした豆をガーゼに包み丁度良い大きさの鍋に、しっかりと嵌め込んだら絶対に踊らない様に落し蓋をして適量の水から、ゆっくりと柔らかく茹であげます。

 

 

その豆を一度、洗いにかけてガーゼで包み直し、また適量の水を加えて黒砂糖を中心に甘味を入れていきますが、入れる回数は数十回に分けます。

 

この間、落し蓋はしたままで水の量も多過ぎず、少な過ぎずの適量をキープしつつ仕上がりに近づいた時に、水・・・正確には豆の煮汁と同じ温度の湯を差していたのをやめて、煮汁を豆に全て吸い込ませると言うイメージで煮汁を少なくして炊きあげます。

 

 

そして仕上がる頃には、黒砂糖の成分と豆の成分が反応して真っ黒な艶が出てきて、妖しく光り輝きます・・(笑