この冬、また集中します <穴子八幡巻>

この一品を目当てに、坐唯杏の御節をご予約なさる方もいらっしゃる、樂旬堂・坐唯杏のスペシャリテです。

 

早速、仕立て方を紹介しましょう。 

 

活けの穴子を割いたら、鰭や腹骨を綺麗に掃除します。

 

武内は鰻屋の出身なので、穴子にも丁寧な鰻の仕事を転用します。

 

腹の骨は特に念入りに掃除を施し、口に当たらないように繊細な切れ目を入れて割いていきます。

 

割いた穴子を湯通しし、皮目のぬめりを束子で洗い流します。

 

穴子の仕込みは、まずはここまで。

 

 

同時進行で牛蒡の太いものを、端を繋げたまま縦に四つ割にして糠茹でします。

 

さっと火を通す感覚で茹で上げ、清湯といって清水で、もう一度茹でこぼし岡揚げとします。

 

岡揚げは熱々のまま、笊に引き上げることです。

 

そして薄い味わいの出汁でさっと炊いて煮含めておきます。 

 

さらに同時進行で、白身魚のすり身を用意します。

 

薄味の下味を加えて、卵白・片栗粉を加えて柔らかく練っておきまして、準備は完了。

 

この準備は巻くまでの準備です。

 

 

繋がった端の方から、粉を叩き皮目にすり身を塗りつけた穴子を巻いていきます。

 

皮を表にするか、身の方を表にするかは職人の趣味で分かれるところですが、武内は焼いて仕上げるときは皮表、煮て仕上げるときは身表と決めています。

 

この場合は、最後に甘辛の煮汁で絡めて仕上げますので身表です。

 

だから穴子の皮側にすり身を塗りつけて皮が中に向く様に牛蒡に巻きつけ楊枝で留めます。

 

楊枝だと扱いづらいと言うことでタコ糸で縛って留める時もありますが、この後の白焼きの作業でタコ糸は焦げる時がありますから、注意が必要です。

 

 

牛蒡は太い所だけを、穴子八幡巻に使って細いところは歯応えがあるので、酢牛蒡、叩牛蒡に使うのが例年の使い回しです。

 

さて巻きつけたら白焼きです。

 

穴子に串を打たないように、避けて牛蒡に金串を放射状に3~4本打ちます。

 

と言うのは、穴子に串を打つと焼いている時に身が縮んで、その箇所から穴子が切れてしまうことがあります。

 

だから巻く時にきつく巻き過ぎるのも、注意する点です。

 

串を打って、表と裏・・両面に程よい焦げ目がつく位に焼いたら、一度串を抜いて90度回して、串を打ち直して、もう一度・・表裏と白焼きします。

 

 

この白焼きが済んだら、すぐさま串を抜いて巻き簾で締めて輪ゴムで止めます。

 

このひと手間で、真円に近い仕上がりになります。

 

そのまま冷まして荒熱が取れたら、一度冷蔵庫でさらに冷やし締めて固めます。

 

後は、大きな平鍋で酒、味醂、砂糖、濃口醤油と僅かにたまり醤油を加えて濃厚な甘辛の煮汁を仕立てます。

 

平鍋に出来るだけ重ならない様に一本ずつ丁寧に並べて、この煮汁が煮詰まって程よい濃度になるまで、強火で炊き上げます。

 

この時には、弱火でタラタラ炊いたらいけません。

 

 

とは言え、鍋肌に煮汁が焦げつくのは避けなくてはいけませんから、鍋肌に飛んだ煮汁は綺麗な濡れ布巾で、逐一拭き取ります。

 

煮汁がしっかりと循環する様に、落とし蓋も忘れてはいけない小技です。

 

坐唯杏の八幡巻の特徴はと言うと、殆どありません。

 

強いて言えば、すり身を使うことで形の安定を図り、味乗りを高める事ですが、きちんと勉強した料理人であれば、広く知られている手法です。

 

全く、伝統的かつ一般的なレシピですが、穴子の割き方から、巻き方、すり身を繋ぎに使う事や、白焼きの具合、巻き簾でのひと手間、炊く時の集中力。

 

 

 

 

ひとつひとつの仕事に、全神経を遣い一貫して、坐唯杏の御節の中でも中心的な一品を作るとの強い想いで仕上げる事です。

 

炊き上がったら、しっかりと冷まして綺麗な切り口が見える様に切れる包丁で潰さない様に、スパッと切りつける。

 

この時にはもう、99%の仕事が終わっています。