シンプルな実力派コンビ <けんちん焼>

「けんちん」と言うと、やはり「けんちん汁」を思い浮かべる人が多いと思いますが、和食の世界では豆腐や玉子をを潰して加えた仕事には「けんちん」という名がつけられます。

 

漢字で書くと「巻繊」などと書きますが、これは我々の修行時代でも、あまり頻繁には使われなかった書き方です。

 

 

さて、過去の御節では真カジキの身で潰した豆腐を巻いて蒸し、そして1人前ずつカットしてから焼き上げると言う「カジキのけんちん焼」を献立に加えていますが、実はこの「けんちん焼」、毎年何らかの形で御節に入れている坐唯杏の得意メニューです。

 

潰した豆腐に魚のすり身を加えて、季節の彩り野菜を下煮してから加えて、塩を当てた魚の身で巻いて蒸します。

 

 

その後、ひと切れずつにカットして焼きあげます。

 

ちょっと複雑な気もするでしょうが、手法的にはシンプルなレシピです。 

 

ただし、長年、取り組んできた一品だけに色々と工夫を凝らしています。

 

玉子の素と呼ばれる、卵黄とサラダ油を乳化させたものを加えたりすると、食感や食味が良くなります。

 

また、豆腐の中には湯葉を加えたり、胡麻のペーストを加えたりと言うコクをプラスすると、印象に残る味わいとなります。

 

使う魚も、やや脂を含んだカジキやサーモンなどが良く合いますが、あっさりとしたカマスや白身の魚でも上品な「けんちん焼」が出来上がります。 

 

魚の切り身で巻くのが、坐唯杏では常ですが穴子のような魚に、魚の形に合わせけんちん具を盛り上げて、蒸すというのも時には仕立てたりします。 

 

いずれにせよ、魚の旨味と豆腐の味わいが、上手く重なり魚だけのとき、豆腐だけの時よりも1枚も2枚も、格が上がる、そんな味わいです。

 

過去何年かぶんの御節は、少し遊び心を入れた「けんちん焼」を仕立てました。

 

 

胡麻のコクと、生クリームのコク、プラスしてみました。 

 

以前より、飛龍頭(ひろうす)などには、よく使う組み合わせであり、手法です。

 

これが、なかなか良いバランスに仕上がりまして、以来このレシピを通しています。

 

こんな事を書くと、なんだか洋風な味わいを想像すると思いますが、食べたら純然たる和食です。

 

武内には和食しか出来ませんし、頭にあるのは日本酒に合わせる事ですから。