真クエでブランド信仰やめました <クエのお話Ⅱ>

店内に1台、この鍋が始まると特徴的な香りが店全体に漂い始めます。

 

おそらく店内にいるお客様は気づいていないと思いますが、外からいらした方は、その食欲を刺激する匂いに圧倒される筈です。

 

もちろん、「クエ鍋」のお話です。

 

今回、久しぶりに純然たるクエを使い、このクエこそ「クエ」だと言う、素材でクエ鍋を仕立てましたが、多々反省する事がありました。

 

その認識をシェアさせてもらいます。 

 

20年近く、坐唯杏を営業してきて「真クエ」を使うことは数えるほどしかありませんでした。

 

 

その中には養殖のクエもありましたし、3kg5kg~大きくても7kgぐらいまでの赤ちゃんクエ、子供クエでした。

 

もちろん、お客様に希望を伺って、予算に合わせたチョイスで素材に対する説明もした上での提供でしたが、武内としてはクエという魚は10kgを超えてから真価を発揮すると主張してきました。

 

ただ残念ながら、そのご宴会の人数や予算に合わずに提供までには至らない事が殆どでしたし、また実は仕入れにも自信が無かったと言う一面もあります。

 

 

築地市場でも、時折・・・クエを見かけるようになって何年も経ちます。

 

でも、その殆どが先の赤ちゃん・子供であったり、いつの魚だと思われる様な魚ばかりです。

 

専門の取引先に何ヶ月も前から頼んでおいて、それでも運がよければ、タイミングが合えば・・で仕入れられる特別な魚でもあります。

 

その中で「真クエ」に特化した仕入れとなると、デメリットが大きすぎました。

 

逆に「真クエ」に拘らずにハタ系の魚でクエに匹敵する味わいを持った魚を探すほうが、ずいぶんと確率が上がります。

 

真クエと言っても色々な固体があります。

 

 

 

 

先日も書きましたが、人間にも太っている人、痩せている人、健康で元気な人もいれば、病弱で弱った人もいます。

 

クエも同じで、クエならば全てが美味い・・・と言うわけでは、決してありません。

 

クエ以外のハタ系の魚でも、クエに匹敵する、いや凌駕する味わいを持った魚は数多あると言うことです。

 

ここ数ヶ月、土佐・室戸との取引を始めて以来、真クエに拘りました。

 

でも、それは我々らしくない恥ずべき認識だったと、真クエを仕入れたからこそ生まれた認識があります。

 

真クエブランドに踊らされていました。

 

我々は、何も「真クエ」をお出ししたい訳ではありません。

 

ただただ、旨い料理、旨い肴を提供したい。

 

真クエ・真クエと魚種と言うブランドだけを追いかけるのは、次元の低い幼稚な発想だったと言うことです。

 

でなければ、おそらくは自分が真クエを扱いたい、久しぶりに真クエを捌きたいと言うエゴでした。

 

 

もう20年近く前に、クエ鍋のご注文を頂いて、真クエに拘らず予算に合わせて調達した魚は、運も良く大当たりの逸材が手に入りました。 

 

その時にクエ鍋を召し上がったお客様の中には、あの時以上のクエ鍋を食べた事が無いと仰って頂けます。 

 

それこそが、我々のやってきた仕事です。

 

今回のクエ鍋、おそらくは他所の店で召し上がるものとは別格だと思います。

 

魚種と言うブランドを超越した、素材のパワー、エネルギー。

 

そして、その一品に対して愚直に、下積みから築き上げてきたノウハウの全てを注ぎ込みます。

 

これこそが<<クエ鍋>>です。

 

ぜひ、この魚に対する新たなスタンダードを築いてください。