睡魔を喰らう ・・海鼠(なまこ)のお話

 

すきものの歯のきこきこと海鼠たぶ   蛇笏

 

あの形を想像するに、どうしても食欲が湧かない・・・そんな方も多いと聞きますが、酒飲みから言わせて頂ければ、あの磯の香り・歯ごたえ・酢との相性などなど、絶好の肴です。

 

良くある話題では、初めて海鼠を食べた人の勇気を讃える言葉が聞こえてきます。

 

ですが、その歴史は古く生活の中にも深く入り込んでいます。

 

 

「青菜に塩」・・と同様の言葉には「海鼠に藁」と言う言葉もあり、我々の仕事の中には、干した海鼠を藁を加えた湯で柔らかくすると言うのは常識です。

 

元々は、藁でたやすく切れる所から発した喩えのようですが、その延長線には共通した小技が生きている所にも歴史を感じさせます。

 

また海鼠の本来の名は「こ」です。

 

干した「海参(いりこ)」に対して生の「こ」と言うことで「海鼠(なまこ)」と言うのが命名の語源です。

 

 

 

心萎えしとき箸逃ぐる海鼠かな   石田波郷

 

ただし、あのコリコリとした食感は食べて美味しい物の、箸で摘むには捕らえにくい。

 

海鼠にまでバカにされているかの様な作者の気持ちが伝わってくる句です。

 

でも、我々が若い頃の先輩の中には、あのコリコリとした身を、まるで胡瓜を扱うみたいにスパスパと切っていく方もいまして、憧れたものです。

 

さて、海鼠の栄養素はと言うと、これが案外・・・侮れません。

 

独特の歯応えはコラーゲンと多糖類によるもので細胞の再生を促して、丈夫でしなやかな血管を作り、骨や目などの老化防止に役立ちます。

 

 

肝機能を強化するベタインやホロトキシンと言うサポニンの一種は強い抗カビ作用が

あり水虫の治療薬にも使われている成分です。

 

 

ダリを父として大雪の魚市の箱に睡魔のごとき海鼠ら   塚本邦雄

 

ダリの絵の中に入り込み枯れ枝の上でだらりと眠っている海鼠・・そんな情景が

浮かんでくる作品です。

 

そろそろ、海鼠の料理をメニューに・・とも考えていますが、今週は魚が

豊富なので先延ばしにしています。

 

睡魔を突きつつ酒を呑む・・・のは、もう少し先にしましょう。