穴子のお話

武内と穴子の出会いは、19歳の頃・・・34年前に遡ります。

 

ホテルの仕事を辞めて、意を決してお世話になった丸の内の割烹「かいはら」で先輩に習った、人生初の魚が穴子でした。

 

以来、思い入れは強く、この魚を扱う事だけは決して他人には負けたくない気持ちもあり、精進しました。

 

 

そんな精進が功を奏して、土佐料理の名店に入り親方に認められたのも、この魚があってこそです。

 

まずは「穴子」と言う名前ですが、その習性からきたものです。

 

岩の中や、砂の中に潜って夜になると活動を始めます。

 

だから、穴子漁は夜に行われます。

 

 

三河湾あたりでは、栓(うけ)と呼ばれる細い割竹で編んだ壷に餌を入れて100個近くも海に流すと、貪欲な穴子は一気に寄ってくるとの事です。

 

さて、穴子の種類には幾つかありますが、基本的にはマアナゴを使います。

 

ギンアナゴ、クロアナゴ、オキアナゴなどがありますし、マアナゴ以外ならゴテンアナゴが次いで美味とされていますが、そんなに扱う機会はありません。

 

 

国産の穴子なら、ほぼ間違いのない所ですが韓国産も出回るので、皮の硬い肌の色の濃いものなら輸入物と思っても間違いないでしょう。

 

有名な産地としては、関西の人なら間違いなく明石と答えますし、東京の人間なら江戸前、羽田の穴子を挙げると思います。

 

鰻と同じく、関西では腹開き、関東では背開きにします。

 

 

武内が習ったのは、江戸前の親方だったので背開きを得意としますし、東京の料理屋なら、ほぼ背開きにするのが普通です。

 

古くは、穴子料理を「ハカリメ料理」と呼びました。

 

それは穴子の体側にある白斑が棒秤の目盛りに似ている所から名づけられた呼名のようです。

 

また穴子は食べても分かるように、鰻に比べたらあっさりした食味が魅力です。

 

それは脂肪分でいえば、鰻の約半分と低いからです。

 

ただしビタミンAは豊富で蒸した穴子を100g食べれば、その日の目標摂取量が賄えます。

 

他にも、ビタミンE、カルシウムも豊富に含みます。

 

 

さてさて、穴子の稚魚は最近では「のれそれ」として広く知られる様になりましたが、武内が厨房の世界に入る少し前までは、「のれそれ」は謎の魚でした。

 

と言うのは、沿岸に寄ってきた「のれそれ」を捕獲して水産試験場で育てようとしても飼育が難しく成魚まで成長させられなかったからです。

 

科学の進歩でDNAを調べれば、すぐに分かる事ではありましたが『謎の魚』というのもロマンがあって良かったのかもしれません。