焼松茸のお話

焼松茸と言うご注文を受けて、武内の頭に最初に浮かぶのは焼いた松茸を割いて、ほうれん草のお浸しと盛り付ける「焼ひたし」です。

 

酢橘の半割などを添えて、柑橘の果汁を利かせた酢びたしと言う手法なのですが、これが焼いた松茸を食べる上では、武内が考える至上の食べ方だと思う訳です。

 

ただただ、酒を掛けて塩を振り焼きあげた松茸を、そのままお出しする。

 

そんなタイプの焼松茸が、世の中には多いですが、よほどの逸材でないと単なる松茸の塩焼きでは、その本質は理解できない。

 

やや、組み合わせの妙と言うか、その他の素材とのバランスも大事になりますが、最も美味しい・・と思う提供法でご用意する事にします。

 

ただ、ほうれん草や出汁の味わいが加わるからとは言え、その本質は松茸の焼き加減。

 

 

そこには妥協は許されません。

 

粗くスライスした松茸に、酒と塩の霧を吹いて、乾き過ぎない様に香ばしさを出しながら、表面には焦げ目をつけつつ、中はしっとりと火が入る様に焼あげ、熱々のうちに手で割いて、用意しておいたホウレン草や菊の花が盛られた器に、こんもりと盛り付ける。

 

ホウレン草の脇には、糸ガキを添えて手前には酢橘。

 

キュッと果汁を絞りつつ、程よいバランスでホウレン草と割いた松茸をお召し上がり頂く。

 

焼松茸の仕立て方として、最も満足感を感じる食べ方だと確信してます。

 

季節には一度は召し上がって頂きたい、樂旬堂・坐唯

杏の渾身の一品でした。