キノコ汁の仕立て方

ざっくりとした汁物ですから、さしあたって難しい調理は一切ありません。

 

本来なら、お好みの具材を集めてお好みの味付けに仕立てて下されば、それが1番美味しいのですが、料理屋風の丁寧な下拵えを紹介させて貰いますので参考にして下さい。

 

キノコ汁の様な、郷土料理、一般の家庭料理風の汁物が会席料理のお椀、特に「先椀」と呼ばれる吸物の位置に出て来ることは滅多にありません。

 

むしろ「後椀」とか「止椀」と言われる、最後のご飯と一緒に出て来るお椀には使われる事があります。

 

というのは、赤出汁や袱紗味噌で仕立てた味噌椀が、この位置で使われるからです。

 

ご飯に合う汁物、という位置づけです。

 

 

そう言う時の汁物には、やはり濃厚な旨味を持った出汁が合います。

 

鶏の出汁や鴨の出汁などと、鰹出汁との混合出汁やウルメやサバ節、煮干しなどの出汁が、使われることの多いです。

 

本日は鶏と鰹の混合出汁でご説明します。

 

鰹の二番出汁に、刻んだ鶏肉を湯通ししてから加えます。

 

他に揃える物は、厚揚げもしくは油揚げ、蒟蒻に彩の出る人参や牛蒡の笹がき、大根や里芋も良く合います。

 

料理屋の仕事では、野菜を大きく切る時には下茹でを必ずします。

 

笹がきだと、キノコと共に油煎りして使います。

 

蒟蒻も茹でこぼして使います。

 

 

蒟蒻は石灰で固めますから、石灰臭をきちんと抜く事、そして

水分を飛ばし味が乗りやすくするのが目的です。

 

また蒟蒻も茹でこぼした後で、油煎りするのが丁寧です。

 

油揚げ、厚揚げは切り付けた後、熱湯をかけて油抜きします。

 

キノコはひと口大に小房に分けてから油煎りしその鍋に、先ほどの

出汁を直接加えます。

 

出汁自体は鍋で仕立てます。

 

油煎りはフライパンを使うとやりやすいですから、フライパンの

材料を鍋にあければ済む事ですが、フライパンについた油の旨味を

全て使い切ると言う意味で、フライパンに出汁を注いでから

鍋に戻すと無駄になりません。

 

その後の洗い物も早くなりますから一石二鳥です。

 

下茹でした大根や里芋と言った、芯まで熱々になりにくい物を

先に加え、油揚げや厚揚げを加えたら、味を付けます。

 

酒少々と、淡口醤油で仕立てる淡口醤油仕立てが、料理屋風の

味付けです。

 

こう言う時の味付けには甘味は不要です。

 

砂糖、味醂は使用されない事を、強くオススメします。

 

また、田舎味噌、塩と濃口醤油の組み合わせも、キノコ汁には

良く合います。

 

味噌で仕立てる時、素材に味を馴染ませるには薄めの味噌で少々炊いてから、

最後に味を決めると言う手法も有力です。

 

でも、最終的に味を決めたら、もうグラグラとは沸かしません。

 

ですが、汁物の美味しさは熱々にあります。

 

出来る限り、沸騰直前というタイミングで熱々で仕立てて、食卓で

ふぅふぅしながら味わう位の気持ちで食べる方の前に差し出して下さい。

 

 

最後に刻んだ葱や三つ葉、芹や春菊などお好みで浮かべるのも忘れてはいけません。

 

柚子の繊切を留めたら、かなり完成度が上がりますし、味噌で仕立てた時の一味や七味、粉山椒も良く合います。

 

和食では、あまり馴染みがないと思われるかもしれませんが、実は胡椒も天平の時代から使われている、歴史の古い香辛料です。

 

鶏の出汁と胡椒の相性の良さは、説明不要ですね。

 

そして何より、汁物の味わい・・味付けにはこの一点。

 

日本料理の味付けは最後の一口に集約されると言う事。

 

最初の一口で、少々物足りないぐらいに感じていても、途中徐々に

馴染んで来て、最後のひと口では丁度よい味わいに感じ、更に後を引く。

 

そんな味付けを目指して下さい。

 

最近のラーメンブームなどでは、インパクト至上の味付けで最初の

ひと口に、いかに旨く感じさせるかを、どこの店でも考えていますが、

 

集約するのは、最後の一口。

 

この考え方だけで、和食の根本をお楽しみ頂けると思います。