美味しい刺身とは

良い刺身とは何か。

 

もちろん、美味しい刺身ですが、その上、さらに要素があります。

 

刺身の技術とは、美味しい切り身を造る技術です。

 

その為に、目利きを勉強し、素材との対話の中から、その素材に最も適した1番良い切り身を切り付ける技術、

 

それが刺身の技術です。

 

もちろん、美味しい・・の中には「美しい」と言う要素も大きな割合で

含まれる条件です。

 

刺身の造り方の中には、美しさと同時に手際の良さや速さ、仕上がりまでのスピードに特化したやり方もあります。

 

 

だから美しい・・・だけでも、それは良い刺身とは言えません。

 

速く美しく、そして美味しい・・・が良い刺身と言えます。

 

そして、もう一つ大切な条件を言えば「食べやすい」と言う事。

 

絶対条件として、刺身はひと口で食べられる切り身とする事。

 

大きな切り身を噛み切って食べる様な刺身は、和食の仕事の中には

存在しない!・・とまで、言い切りたい気持ちです。

 

これが魚屋の仕事なら、大きな切り身を喜ぶ風潮もあります。

 

でも料理人の仕事は、あくまでも一切れで最高の味わいを感じさせる切り身を造る、これが刺身です。

 

 

鮮度が良く、味わいの豊富な素材を仕入れる。

 

その鮮度と身質の兼ね合いで、一切れの大きさが決まります。

 

鮪や鰹などは厚い切り身にした方が旨い・・と言われるし、河豚などの繊維の密な魚は薄造りが適した造り方です。

 

また鯛や平目でも、〆てからの時間で身の締まり具合、アミノ酸への

分解の進行状況で、身の厚みや大きさが決まります。

 

〆たての、プリプリした状態の身を厚く切れば、口の中で噛み切れず、最後はゴムを食べているかの様な食感となります。

 

これが〆て、2~3日も寝かして熟成させたものなら、厚めの刺身が

非常に旨く感じる。

 

 

この辺の判断が料理人のセンスや経験、志向によって、その店ごとの味わいに繋がります。

 

ところが、厚く切りたい身質でも、薄く切らなければならない時があります。

 

それは、樂旬堂・坐唯杏では鰹のたたきです。

 

鰹などは厚めに切った方が美味しい代表的な魚ですが、坐唯杏の

土佐流のたたきの場合は、血合い付きの切り身を基本とします。

 

だから背節にしても腹節にしても、サクにとらずにそのまま使う事が

多いのです。

 

 

これが3kg前後の丁度良いサイズなら、厚めに切っても充分に、ひと口で食べられる美味しい切り身となりますが、そのサイズを超えると

切り身自体が大きくなります。

 

そう言う時は、仕方なく大きめの切り身で薄く造ります。

 

そして、その切り身を召し上がる時には、二つ折りにして薬味などを

挟んで召し上がる事を、強くオススメしているのです。

 

先ほどのお話の、鯛や平目の刺身でも〆たてのプリプリした状態の

身を刺身に造る時、やや広め長めに造る時があります。

 

そう言う時は、最初から二つ折りにして盛り付ける場合もあります。

 

和食の基本として、1人前の貫数は決まっていますから、なるべく七切れで盛りたい。

 

 

とは言え、薄く造らなければ味わいが悪い時などに、この二つ折りの

手法が用いられます。

 

だから、召し上がる時も、その料理人の意図を汲み取って二つ折りにした状態で召し上がると、料理人の目指す最高の味わいを賞味できると言う訳です。

 

最高の切り身と言うのは、なにも刺身に限った訳ではありません。

 

漬物にしても、トンカツに包丁を入れる時も、炒め物の野菜に至っても切りやすい大きさではなく、食べた時に最も食べやすく、素材の味わいを最高に堪能できる大きさ。

 

そこを目指すだけで、料理が変わります。

 

食べる時の味わいも、きっと変わりますから、ぜひぜひ!

 

こんな意識を持って料理を作り、食べてみてください。