「小川〆」と言う仕事

「小川」と名の付く仕事は、和食の世界には数多くあります。

 

語源としては、近くの小川に散歩に行く程度の時間で仕上がる、短時間で出来る仕事と言う意味です。

 

大抵の場合は、酢で締める仕事に使われる事が多いのですが、素材をミンチ状にして塩と酢で締める手法が主に小川締めと呼ばれます。

 

例えば、イカや赤貝などを刺身用に掃除して、包丁で叩いてしまいます。

 

裏技と言うか、本音を書くと綺麗な刺身にならない部分、イカなら耳や刺身の端切れを使い、赤貝なら紐や、切目を入れ損ねた身などを

叩いてしまいます。

 

 

この叩いた身を、平らに伸ばして塩を当てて、しばし時間を置き

ひと口大に掻き取ったら薄めの酢、例えば甘酢などに浸して締めるという手法です。

 

もっと丁寧に、複雑な味わいに仕立てるなら塩を当てる時に昆布の

上に伸ばして、塩を当ててから更に昆布で挟んでおく・・昆布締めで

仕込む事もあります。

 

この昆布締めの段階でも、充分に旨いのですが酢をくぐらせて身を

締めれば、酸で凝固しますから扱いやすく、更に味わいは凝縮します。

 

そして武内が思い出したのは、サーモンの小川締めと言う一品で、

スモークサーモンにイカの叩いた身を抱かせて紅白の刺身を造るという一品です。

 

叩いて塩を当てたイカの身を、スモークサーモンの切り身に適量、

塗りつけて、甘酢に漬けて身が締まった所で引き上げます。

 

この紅白の切り身を、ドレッシングの様なタレを仕立てておいて、

前菜に使いました。

 

カルパッチョのような感覚です。

 

ちょっと手が込んでいて、と言っても決して複雑な手順でもなく、

食べる方は、新鮮な驚きとささやかな感動を味わって頂きました。 

 

よく歳を取ると、昔の事を思い出すと言いますが、我々の仕事にとっては

思い出さなくてはいけない事だらけでして・・

 

なんとか、忘れない様に昔のノートや手帳などを見返すのも必要な

作業になりました。