満足飯

このご飯・・・

活きの良い安い魚が手に入った時、沢山造って楽しむ事を辻翁が薦めておられます。

 

実にシンプルで、読んだだけで旨そうと感じるのは、武内が人生最後の晩餐には、卵掛けご飯を選ぶぐらいの卵ご飯ファンだからかもしれません。

 

白身の魚、鯛や平目、鰈など・・なら、細い糸造りにします。

 

背の青い魚、鯵や鯖などは大きめの角造りにします。

 

濃口醤油:6、たまり醤油:2、味醂:2の漬け汁に煎り立て、粗摺りの黒胡麻を加え、白身魚なら1時間、青魚なら2時間ほど漬け込み、

 

 

平らな小鉢に盛って卵を落としたら、炊きたてのご飯に、魚と卵を箸でかきまぜてご飯に乗せて食べなさいと教えてくれてます。

 

漬け汁も好きなだけ掛けて、、、熱々のご飯をかき込む快感が、すでに脳の中に湧き上がってくる。

 

そんなご飯ではないでしょうか。 

 

辻翁の著書では、この満足飯と名づけられたご飯と共に、高村光太郎さんの詩が1編、紹介されていました。

 

 

 

暴風をくらった土砂ぶりの中を

ぬれ鼠になって、

買った米が一升

二十四銭五厘だ

くさやの干物を五枚

沢庵を一本

生姜の赤漬

玉子は鳥屋から

海苔は鋼鉄をうすくのべたやうな奴

薩摩あげ

かつをの塩辛

 

湯をたぎらして

餓鬼道のやうに喰ふ我等の晩餐

 

ふきつのる嵐は

瓦にぶつけて

家鳴震動のけたたましく

われらの食欲は頑健にすすみ、

ものを喰らひて己が血となす本能の力に

迫られ

 

やがて飽満の恍惚に入れば

われら静かに手を取って

心にかぎりなき喜びを呼び

かつ祈る

日常の瑣事にいのちあれ

生活のくまぐまに緻密なる光彩あれ

われらのすべてに溢れこぼれるものあれ

われらつねにみちよ

 

われらの晩餐は

嵐より烈しい力を帯び

われら食後の倦怠は

不思議な肉欲をめざまして

豪雨の中に燃え上がる

われらの五体を賛嘆せしめる

 

まづしいわれらの晩餐はこれだ

 

 

智恵子抄より「晩餐」