お椀の仕立て方

鱧と松茸のお椀以前に、鱧のお椀と言えば牡丹鱧と言う仕立て方が

あります。

 

ところが、この牡丹鱧と現在、提供させて頂いている鱧松のお椀では

仕立て方が全く違います。

 

牡丹鱧の場合は、鱧自体の旨味を堪能するために、薄く塩を当たり、鱧の旨味を増幅した上で、葛粉(片栗で代用する場合もあります)を切れ目の中にまで叩いて、とにかく鱧の味わいを身の中に閉じ込める。

 

その上で、昆布出汁や塩湯で火を通し、鰹で引いた出汁を張って

薦めます。

 

ところが、鱧松のお椀と言うのは鱧の出汁を味わう料理です。

 

 

骨や頭から取った出汁を使う場合もあるほど、鱧の旨味と言う所に

集中させて、松茸を添え香りと旨味を味わう一品です。 

 

ですから、鱧松のお椀に使う鱧は、塩も当てませんし、余分な仕事、

葛粉を叩いたりもしないのが、お約束です。

 

出汁の中で骨切りした鱧を充分に火を通し、その時に滲み出る旨味を存分に活かしつつ、松茸も火を通し椀の中に盛り付け、そのまま・・

 

その出汁を調えて使うのが基本的な、鱧松のお椀の仕立て方です。

 

これは、松茸の新物が出回り組み合わせの妙を楽しむための手法と

思いがちですが、実は季節的な味わいの嗜好にも関係します。

 

吸物の味付けと言うと、夏場の暑い時季は塩を中心にスッキリした

味付けを良しとします。

 

対して冬場の寒い時季ですと、塩を控えて淡口醤油を利かせた

こっくりとコクのある味わいを目指すのです。

 

その為のお椀にも、季節による型の違いがありまして、コクのある

味わい、熱々のお椀をたっぷり味わえる冬のお椀と、

 

浅くしつらえた、スッキリ味のお椀を涼し気な椀種と共に味わう

夏の椀です。

 

そして、仕立て方の基本、出汁の取り方さえ変えて仕立てる店も

あります。

 

殆どの高級店では、上物の本枯れ鰹節を使いますが、夏の出汁は

ややスッキリと、冬の出汁は濃厚に旨味豊富な出汁を引くと言う

違いです。

 

こういう仕事に関しては、季節により仕立て方を変える気遣いをする

店に通い、季節によってその味わいが変化する所を見極めないと

なかなか、一般の方ではご理解には至らない細かい部分だと思います。

 

贔屓の店、贔屓の板前・・・ぜひ、お作り頂いて季節によって変わる

仕立て方の差、確認してみては如何でしょう。