1本の魚の使い方

日本料理は「水」の料理・・・と、何度となくお伝えしていますが、さらに、観念的な部分で強く感じる事は「感謝」の料理と言えると思います。

 

豊かな自然に囲まれた環境、四季のある季節感、そして作物や自然の恵みに対する深い感謝の気持ちが根底にあり、その表現方法の一つとして日本料理は発展してきた。

 

日本料理は感謝の料理・・と言う事に、異論を唱える人は、我々の世界、業界には、殆どいません。

 

 

とは言え、その観念をきちんと伝えて、実行出来ているかと言うと、現代の料理界には、甚だ疑問があります。

 

かく言う、樂旬堂・坐唯杏でも1本の魚を余す所なく使い切れているかを、考えると反省の至りです。

 

魚・1本を仕入れたら、その部位により様々な使い方があります。

 

最初に落とす「鱗(うろこ)」も干して揚げたりする鱗煎餅や揚げてから飴炊きにする使い方があります。

 

頭は言うに及ばず、兜煮・兜焼にアラ煮、潮椀や味噌仕立てにと使い道の多い部位です。

 

 

三枚や五枚に卸して、中骨や腹骨などは身の厚い所ならアラ煮、障子焼となりますし、鮮度の良い魚なら出汁を引けば極上の煮出汁が出来上がります。

 

また、内臓では肝は卵液で伸ばしてから蒸して肝豆腐と言った手の込んだものから、肝酢、肝醤油と言ったもの、蒸してそのまま食す、アンキモの様な仕立て方まで広い範囲で利用できます。

 

さらには、ビタミン・脂肪分が豊富に含まれますから栄養価も極上と言う、うれしい素材です。

 

 

大腸・小腸・胃は割って、中まで綺麗に水洗いしたら塩を当てて数時間置いて、出てきた水を捨てたら更に塩を足し塩漬けにして置けば、絶好の珍味となります。

 

真鯛で仕込んだ「鯛わた」が有名です。

 

他にも、皮はさっと湯引きしたら刻んで酢の物や椀種、刺身の添え物にも使われますし、ゼラチンや寒天で寄せる煮凝りにも旨い素材です。

 

珍しい所では、鱧や鱸では良く使われる「笛」、つまり浮き袋も塩を当てて茹でたら高級な椀種という認識ですし、和え物、塩辛系の珍味にも利用できる貴重な部位です。

 

卵や白子は、ご存知の通り必ず利用したい美味の宝庫。

 

鰭(ひれ)に至っても、鰭酒で知られるように干して炙ってから

燗酒に入れれば、絶妙な味わいを楽しめます。

 

他にも、鰓・心臓、魚によっては粘膜や、身を取り尽くした後の

骨までも綺麗に利用できる。

 

また、その利用法が長い歴史の中で、確立されています。

 

冒頭で反省と書いた様に、樂旬堂・坐唯杏においても、完全に

使い尽くしているかと言えば、まだまだ手の回らない部位もあり、

武内が板場に立っていた時も、断腸の想いで処分していた物も

あります。

 

こういう仕事、こういう文化は必ず後世に伝えたい「宝」です。

 

強い使命感を持って、意識を強く持ち、もっともっと取り組んで

いきたい課題です。