料理人の知らない鯨の話

モラトリアム…商業捕鯨が禁止されて、当時の築地市場では鯨屋さんが一斉に店じまいをしました。

 

鯨以外の魚に転身する仲買いさんが殆どで、歴史が変わったのを痛感しましたが、現在は何件かの鯨屋さんが場内市場では営業してます。

 

と言うのは、調査捕鯨の副産物を仕入れて売る事が可能になったからです。

 

我々、樂旬堂・坐唯杏では、その仕入先。

 

調査捕鯨を請け負う共同船舶さんから、仕入れをさせて頂いて

おりまして、南氷洋・北極海からの鯨を原版で仕入れる事が出来ます。

 

 

ただし、そういう仕入れには扱う上で難しい事があります。

 

殆ど、〆たての死後硬直していない状態で冷凍処理された鯨ですから解凍後に起こる解凍硬直を防がないと、ドリップによって肉汁が流出します。

 

これは鯨に限らず、冷凍のマグロでも起きる現象で、下手な人間が解凍すると、使い物にならなくなる場合もあるほどです。

 

この原理を理解していないと、鯨の場合はもっと損失が激しくなります。

 

それを解決するのが、専門用語では「ATPコントロール」と言います。

 

簡単に言い換えると、緩慢解凍をする事なのですが、この緩慢と言う

頃合いを見極めるのが、職人の器量となります。

 

 

また、緩慢に解凍しさえすれば、食材として完璧かと言えば、そんな簡単な事では無く、発色と酸化を考慮しなくてはいけません。

 

鯨の様な、赤い色の肉質をしている物は空気と触れる事で、あの鮮やかな赤色を発色します。

 

時たま、周囲だけ赤く発色しているけど切り身の中心に掛けて、黒ずんだマグロを寿司屋や和食店で見かける事がありますが、その状態をアンコと言いまして、発色に失敗した例です。

 

空気に触れさせ過ぎると、酸化が進みまして劣化が起こります。

 

逆に空気に触れさせないと発色が起きない。

 

 

1番の原因は戻り霜です。

 

解凍の途中で素材の表面に霜がついて、空気に触れなくなると発色が弱くなります。

 

この辺が緩慢に解凍さえすれば良いかと言うとそうでもない・・と言う、大きな理由です。

 

と、本日は専門的な話題ではありましたが、綺麗に発色して、なおかつ肉汁をしっかり含み、鮮度の良い味わいを感じる鯨は、こう言うノウハウがあって実現します。

 

お召し上がりになる時は、その陰にあるノウハウもご一緒にお楽しみ

下さい。