隠し包丁

隠し包丁とは見えない所に包丁で切れ目を入れて内部を確認したり

食べやすくする、または内部の邪魔なものを取り去る仕事です。 

 

例えば魚を丸で1匹、焼魚にする時に裏側から包丁を入れて

内蔵を出しますが、 

 

あれが典型的な隠し包丁です。 

 

大昔、昭和30年代頃の、専門誌を見ると、鮎の様なでも内蔵を

抜いて焼魚にしていた記録があります。 

 

今からは考えられない仕事ですが、当時は流通も良くなかったでしょうし、内蔵付きが、そのまま美味に繋がらない事も多かったのでは、

 

 

 

・・と、いきなり話が逸れてしまいましたが、焼物腹と言う隠し包丁で

内蔵を抜くのが丸1匹の時の処理の仕方です。 

 

ですが、隠し包丁と言うのは、ただ単に邪魔な物を取り去る時だけの

技術ではありません。 

 

日本料理と言うのは、あくまでも食べる人にとって食べやすく、そして

美味しいと言うのを目指します。 

 

幾ら美味しくても食べにくい料理は、それだけで基本から外れている事になりまして、食べにくさゆえの不味さを避けます。 

 

では、具体的にどう言う時に隠し包丁を使うかと言うと、例えば沢庵。 

 

真ん中を切り掛けにして、、、と言うのは最後まで切り離さないで切れ目を入れつつ一切れずつ切っていきます。

 

 

つまりは切り離す、切り離さない、切り離す、切り離さない・・を、

繰り返すのです。 

 

薄い沢庵が2枚、重なっている様な形になりまして、歯応えの良い

本物の造りをした沢庵だと、非常に心地良い食感が楽しめます。 

 

他には、豆腐の寄せ物や飛龍頭を揚げて餡を掛ける料理の時など、箸で切りやすいように、裏から切れ目を入れておく時があります。

 

大きなお饅頭の様な料理がドーンと出てきても箸を入れ始めると

切れ目が出てきて、容易にひと口ずつを口に運べると言う配慮です。 

 

 

また、他では蛸や烏賊の様に少々、固い食材の時に裏から斜めに

格子状になる鹿の子包丁を入れておいて噛み切り易くしたりもします。

 

これは裏から入れれば隠し包丁ですが、表から入れたら飾り包丁とも

言えますが・・・。 

 

他にも身近な食材だと、例えば茹で豚などを作って、熟成が進んでいない豚肉だと、茹でて非常に固くなる時があります。 

 

茹で過ぎた時も固くなりますが、死後硬直から身が緩んできたぐらいの方が肉質は柔らかくなって、味も出ると言われていまして、 

 

そう言う固い肉の場合に、裏から細かく包丁で切れ目を入れてやると、食べる時に、とても食べやすくなります。

 

 

 

もちろん、手の掛けすぎは禁物ですが、固くて顎が疲れる・とか、

お年寄りに料理をお出しする時などは、こう言う手法を用いて、

少しでも食べやすくするのが、和食の基本です。 

 

また、蛸やイカなどは、表と裏から斜めに互い違いに切れ目を

入れてお出しする場合があります。

 

この手法は飾り包丁と隠し包丁の複合技と言えます。 

 

蛇腹胡瓜の様な包丁目が入っている蛸。

 

どんな食感がするかご想像下さい・・・ 

 

こう言う仕事が和食の中では、綿々と伝えられてきた仕事です。

 

 

 

こんな事も参考になさって、料理に取り組んで頂けたら、また・・・

 

ひと味、変わります。