引き算の料理

和食の世界にいる者なら、誰でもその名を知っている料理人、

その人の名物料理に伊勢海老と鮑を使った鍋があります。

 

 

武内の師匠の、強く記憶に残っている言葉に『「寄せ鍋」みたいな

ものが1番、安っぽい』と言うのもありました。

 

 

つまりは、本当に価値のある物なら「その物」を、存分に味わう

仕立て方をする。

 

あれも、これもと言う感性が高級な物を、俗っぽく感じさせる、

と言う事です。

 

武内も若い頃から小細工が好きでした。

 

 

見えるところ、見えない所に、なんだかんだ手を掛ける。

 

そういう些細な事にこそ、料理人の個性が出て店にも料理にも

独自の世界が構築できる、

 

 

そんな事こそが創意工夫であると、信じていた時があります。

 

武内の料理は、ある時期を過ぎてとてもシンプルになりました。

 

本当に大事な事は、大切にして。

 

 

些細な事は省略する、もしくは敢えて捨てる方向に向かったのは

引き算の威力を感じたからです。

 

その物ズバリ!と言う料理の中に、繊細なバランスがある。

 

 

年齢を重ねる中で、そんな感覚に変わってきたのです。

 

 

土佐料理を学んで、豪快・大胆な中に繊細・緻密さを発見しました。

 

料理の道を歩んで来て、同じことだとあらためて感じています。

 

 

読者の皆さまもご家庭で料理を作る事があると思います。

 

 

カレー、唐揚、ハンバーグ・・・

 

そういう料理も、意外な組み合わせを試したり、斬新なスパイス、

手のかかるレシピをお試しになる事。

 

 

それは、それで楽しいし、大切な事だと思いますが、

 

「王道」と呼べるようなど真ん中の仕立て方にも、ぜひ!

 

新鮮な気持ちで取り組んでみて下さい。

 

必要最小限の中にこそ、今まで気づかなかった料理の本道が

ありますから。