鰤(ブリ)照焼

「鰤の照焼」と言うと、もっともポピュラーな焼物ですが、実は

プロの中でも、きちんと仕上げられる職人は、そんなに居ない。


実に奥の深い仕事だと言えます。



焼タレをきちんと、切り身に載せて照りがぴっかり乗るまで、

焼き上げるには、熟練が必要で、今の職人にはそんな熟練が

欠けている人が多い。



すると焼タレが、どんどん濃くなっているのが、和食調理界の

現状だと思います。



そもそも、照り焼きの「照り」はメイラード反応とか、アミノカルボニル反応とか言われる化学反応で起きる物で、タンパク質と糖が結びついて熱で変化する、

 

 

ぼやっとした知識では、確かそんな事なのですが、ざっくりした

乱暴な捕らえ方としては、カラメルです。

 

 

糖を熱していき、焦げる寸前まで行くと、香ばしい飴状になります。

 

 

あの状態を魚の切り身の表面上で実現すれば良いのですが、

実は、そんな簡単な事でもありません。

 

 

鰻屋の世界では、割き1年、串打ち5年、<焼一生>なんて言われる位、奥の深い仕事とされていまして、このカラメル状にぴかっと均一な照りを乗せるのが、

 

 

毎日違う素材と相対して、何年やっても上には上がある、今日よりも

明日、明日よりも明後日みたいな認識です。

 

 

なので、最も奥の深い仕事ですが鰻屋の焼きのノウハウから

見ると、一般の和食店の照り焼きのお粗末な事が、あからさまに

分かってしまう。

 

 

巷の焼鳥屋に至っては、・・・・と言う事です。

 

 

鰻の焼き方から応用した焼き方を書くと、三度のタレ付けで焼き上げます。

 

 

1度目のタレで色をつける、2度目のタレで味をつける、

 

 

そして3度目のタレで照りをつけると言われています。

 

 

鰤などの生の切り身の場合は、脂が強いのでタレの乗りが悪い、

だから醤油洗いをしたり、幽庵地に漬けてからタレ焼をしたりします。

 

 

その方が自然に色・味が馴染んで、照りが乗ります。

 

 

もちろん、坐唯杏でも醤油洗いは欠かしません。

 

 

さらに丸の内の割烹時代に教わった手法を見直して、良く使いますが、

砂糖醤油で洗い、少し馴染ませる程度に漬ける方法です。

 

 

様々な手法を織り交ぜながら、適材適所で使い分けたり、素材に

よって選択します。

 

 

と言う事で鰤の照焼の場合、醤油洗いをした上である程度、火を

通してからタレ付けします。

 

 

1回目のタレで色がつきますが、次の行程が1番のポイントです

 

 

2回目のタレ付けの時に糖分がカラメルになるまで焼きます。

 

 

いや、カラメル状を若干通り過ぎる位になるまで焼く、と言った方が

正解です。

 

 

カラメル状になって、やや焦げ目に近くなってきたタレは切り身に

しっかりと纏わり付いて味が乗ります。

 

 

ただし、この2回目のタレ付けが最も微妙な焼き具合を左右する

1番の難所です。

 

 

そして、この上に3度目のタレを掛けると、一瞬で綺麗な均一の

照りとなります。

 

 

最近の焼鳥屋・和食屋では、こう言う認識がないので技術を放棄して、

タレに片栗粉やコーンスターチでとろみをかけて、味を簡単に乗せる

ところが増えています。

 

 

焼鳥の肉を醤油洗い、とまではいかなくても、薄いさらっとしたタレを

使って、綺麗な照りをぴかっと乗せて焼き上げられたら、凄く綺麗な

仕事ですし、

 

 

味わいも爆発的に良いです。

 

 

ですが、そこには焼き上げる火の通り方と照りの付き方のバランスが

絡んで来て、火の強さ、時間、タレ付けのタイミングが複雑に絡み合うのが

照焼の難しい所でもあり、面白い所でもあります。