餡かけ豆腐

 様々な料理の勉強をして、知識を蓄え、技術を習得して、その後に至る境地が手放す事であり、引き算の料理だと思います。


そんな境地で、樂旬堂・坐唯杏でお出しする一品と言えば、間違いなく、


「冷奴・温奴」です。


豆腐を切って、そのまま盛り付ける。



薬味を添えたり、醤油をかけたりもしますが・・坐唯杏では潔く「塩」のみ。


粒の大きなカリッとする塩をぱらっと振ったら、それで完成です。



温奴では、湯豆腐と同じ要領が正統派の仕立て方です。

 

 昆布出汁に塩を一つまみ加えたら、薄く葛を引きとろみの付いた湯の中でじんわりと温めて、その後塩をぱらっと振り掛ける。

 

 でも、坐唯杏では更に引き算を重ねて、蒸し器で温めてそれで終わりと言う、簡略したレシピで提供しています。

 

 

湯に漬けない分、豆腐の味わいが残りますから、よりストレートに豆腐の味わいを感じて頂けるのではと言う考えに基づいてのレシピでして、

 

 

シンプルにして繊細な、豆腐の味わいが堪能できます。

 

 

とは言え、塩だけで味わう豆腐の旨さも、今の時季からは少々、物足りなく

感じる時があります。

 

 

 そこで、以前メニューに加えたのが「餡かけ豆腐」です。

 

 

濃い目の二番出汁に塩を加えて、やはり薄葛を引き、その出汁で豆腐を温めます。

 

 

別鍋に味醂を煮切って出汁と醤油を加えて、鰹の削りを放り込んで漉したら

濃い目の葛を引きどろっとしたベッコウ餡を仕立てます。

 

 

その餡を温めた豆腐に掛け、卸し生姜を添えたら完成です。

 

 

この時に注意するのは、豆腐の温め具合です。

 

 

鍋の豆腐、豆腐の田楽、全ての豆腐料理に共通するのは熱々にし過ぎない事。

 

 

煮切ってしまったら豆腐の味わいは、格段に落ちます。

 

 

表面は熱々になっていても、芯の方はしっかりと味わいを感じられる仄かな温度。

 

 

口の中に入れて、舌の隅々まで豆腐の味わいを感じられる心地良い温度が

豆腐料理の基本です。

 

 

実は、先日の能登旅行で塩田に行った際に、にがりを買ってきました。

 

 

無調整の豆乳を買ってくるか、大豆をジューサーで潰して生の豆乳を取るか、

それを温めてにがりを打てば、自家製の寄せ豆腐が出来上がります。

 

 

その出来立ての寄せ豆腐で餡かけ豆腐。

 

 

本来なら、この仕立て方が1番うまい方法かもしれません。

 

 

冒頭の「手放す」・・と言う本題からは、またまた遠ざかってしまった様な

気もしますが・・・。