海鼠(なまこ)酢

 ナマコと言うと、そのグロテスクな容姿からは想像の出来ない潮の香り漂う、歯応えの良い・・・酒飲みには絶好の味わいに驚かされますが、

 

修行時代には、この素材には泣かされました。

 

両端を落として、腹を開けて内臓を掃除し、薄くスライスしていくのですが、これが、なかなか・・・ 

 

まな板の上で、ぴしっと止まってくれないです。

 

 

ぐにゃぐにゃしてるのも、ありますが表面のつるつるした感覚が思うように包丁を使わせてくれません。

 

 

とは言っても、ナマコを切り付ける時は、修行時代に至っては10kg単位で仕入れがあったので、量はそこそこ、こなしました。

 

 

 

最初は思うように進まなかった包丁も、徐々に勘所が掴めてきてスピードに乗れるようにもなったのですが、上には上がいる。

 

 

師匠の包丁を見ていると、何事も無かったかの様に普通の素材を切るかのごとく、包丁が入っていきます。

 

 

ナマコの切り方は、押して包丁を入れて引いて切るって言うのが1番、効率の良い切り方だと思いますが、これが肉か、普通の魚の切り身を切るように包丁が入っていく。

 

 

それはもう、見ていて気持ちの良いぐらいでして、憧れました。

 

 

 

 

師匠に、その話をすると師匠の師匠は、胡瓜を切るようにナマコを包丁していたって事で、更に驚きでした。

 

 

武内のレベルだと、少しでも包丁しやすい様に、ナマコの掃除が終わった後、バットに並べて少し整形する時間を取ります。

 

 

包丁するに、やりやすいのは幅が狭く高さがない素材。

 

 なるべく、ナマコに希望を聞いてもらうのです(笑

 

バットの上に希望する形に並べて、しばらく置いておくと、その形で固まってきます。

 

 

そこをすかさず、切ります。

 

 

まぁ、そんな他愛ない努力の結果、人並みにはナマコの包丁が

出来るようにはなったのですが、決して達人のレベルから見れば

人並み・とは言いがたいスピードだったと思います。

 

 

師匠が、よく言っていた「上には上がいる」

 

 

痛感したものです。 

 

さて、この包丁したナマコですが、茶振りします。

 

茶振りと言うのは、番茶を煮出した汁で湯通しする事。

 

お湯でなく、お茶で湯通しする事で柔らかくなるとか。

 

茶振りの後は氷水に落として、水気を切って吸い酢に漬けます。

 

吸い酢とはやや薄めの三杯酢ですね。

 

吸える位の薄い酢、と言う意味です。

 

漬ける時には鷹の爪の小口切りを加えて。

  

これで、下処理は完了。

 

 

大根おろしと二杯酢で和えたり、チリ酢・ポン酢醤油で和えたりと

酢の物が良く合います。

 

こうして、絶好の肴が出来上がります。