とろろ汁

街を歩いていて、空腹の時に見る「麦飯とろろ」の看板には、非常に魂が揺さぶられる時があります。

 

独特のとろみと味わいが、素っ気無い食感の麦飯とあいまって口の中で美食の宇宙が広がります。

 

里芋の炊きこみご飯を作るときも、1~2割の麦を加えると、芋のねっとりした食感と、少しぱさついた麦の対比が絶妙なバランスとなって感じられます。

 

とろろ飯のときは、是が非でも麦飯としたい所ですが、炊き立ての新米ならばそんな食感の対比も凌駕する美味しさもありまして。

 

このさい、麦飯か新米かと言うのは置いときまして、正統派「とろろ汁」の仕立て方をご紹介しましょう。 

 

 

 

使うのは、最も手に入りやすく、そして最も味の良い大和芋です。 

 

ここでケチって長芋で済まそうと言うのは、得策ではありません。 

 

水気が多く、とろろ汁にした時に味わいが薄い。

 

 街で食べるとろろご飯の大半は、長芋を使ったものですが原価的に採算を取るために使用しているに過ぎません。 

 

必ず大和芋を使ってください。 

 

大和芋は厚めに皮を剥き、酢水に漬けます。 

 

灰汁を止めると言う意味ですが、やはり真っ白に卸した物が美味しく

感じられます。 

 

 

とは言え山芋の最高峰、自然薯なんかは絶対に真っ白にはなりません。 

 

よほど、皮を綺麗に剥き去り、灰汁を止めて卸せば別ですが、細い

自然薯の皮を厚めに剥いたら、食べられる所が無くなります。 

 

酢水に漬ける事によってぬめりも取れます。 

 

あとからの仕事がしやすいのも、効果大です。 

 

その大和芋を軽く水洗いして水気を拭き取ったらすり鉢で卸します。 

 

大和芋には二種類あって、公孫樹の葉の様な形の「手芋」と呼ばれる種類と棒状の種類があります。 

 

 

扱いやすい棒状の物が最近の主流ですが、棒状のものならすりこ木の様にすり鉢に当てていけば自然と卸せます。 

 

手芋の方は、大きくすり鉢の面を使いながら垂直に当たるように卸して下さい。 

 

くれぐれも力の入れ過ぎにはご注意を。 

 

卸したとろろが粗くなりますから、あとの工程に結局、時間が掛かります。 

 

滑らかな食感と、きめ細かい喉越し。 

 

ここは譲れないところです。 

 

さて卸し終わったら、そのまま・・すり鉢の中ですりこ木を使って丹念に摺ります。 

 

細かく卸せているので、一見・・無駄な仕事のように感じますが、この工程が入ると入らないとでは、仕上がりの食感が格段に違います。 

 

そして我々なら、卵の白身を加えてさらに摺る・・ところですが、ご家庭のとろろ汁なら全卵で構いません。 

 

卵を加えて、さらに摺り・・・滑らかなとろろになったのを確認して出汁を加えます。 

 

出汁は味噌仕立てが良いです。 

 

普通の味噌汁を仕立てるよりも3倍・4倍ぐらいに濃い味噌汁を作っておいて、

すり鉢のまま徐々に加えて、すりこ木で摺りながら伸ばします。 

 

べとべとだった緩い餅の様な感触から、ご飯に掛けられるぐらいに伸ばしたら

完成です。 

 

青海苔やもみ海苔など添えるのも良いですし、マグロのヅケなどを添えたら

ご馳走ですが、敢えてシンプルに何も添えず、とろろ汁・・そのものを味わう

のも、また格別です。 

 

炊き立てのご飯に、豚汁やキノコ汁、魚のアラ汁など熱々の美味しい汁を

添えて、後は漬物だけ。 

 

食卓の真ん中に、とろろ汁をドンと据えて木のお玉から各自、好きなだけ

ご飯に掛けつつ、飯を掻きこむ。 

 

あぁ、考えただけでも豪勢な食卓だと思いませんか。 

 

正統派とろろ汁のお話しをお伝えしました。 

 

ぜひぜひ、八百屋で大和芋を見かけたらお試しください。

 

 → トロロ芋のお話 も参考になさって下さい