【プロ技】 秋刀魚の辛煮

秋刀魚の辛煮・・と言っても、唐辛子系の辛味があるわけでも

生姜や山葵が利いている訳でもありません。

 

辛煮と言う料理は、醤油で煮込んだ強い味の煮物を指す言葉です。

 

とは言え、冷蔵庫の発達や流通網の発達で、さほど濃い味わいに

仕上げなくても、保存性は充分に確保できる様になりましたから、

 

 

昔に比べたら、味わいはずいぶんと優しくなったのではないでしょうか。

 

 

さて、秋刀魚は腸付きで、そのまま調理したい所ですが頭と内臓を

取り除き、水洗いしてしまいます。 

 

と言うのは、内臓から鱗が出て来ることが多いですから、好みが分かれるところ。 

 

お好きな方は、そのまま行っちゃいましょう。 

 

そして平たい大きな鍋に秋刀魚を並べます。 

 

我々の様に、1回の仕込みで何十本も炊く場合は、真ん中を空けて

放射状に並べたり、若干斜めにしながら丸鋸の刃の様に並べたりします。 

 

ご家庭で作られるなら、並べ方はいかようにも。 

 

真っ直ぐに横に並べても結構ですし、互い違いに並べてもOKです。 

 

ただし、1本で盛り付けた時に表になる側を上に向けて置くようにします。 

 

民主党の議員さんで、秋刀魚の向きを頭を左にせず右向きに盛り付けて

物議をかもした方がいらっしゃいましたが、

 

基本的に1本の魚なら頭は左、腹を手前にして盛り付けるのが

和食の常識です。 

 

大昔なら、海の魚と川の魚で、盛り付け方が違いましたが、

現在では、あまり気にせず全て、この盛り付けをする職人が多いです。 

 

話が逸れました。 

 

並べるときの注意点を、もう一つ。

 

魚体が他の魚に乗って、波打つ様な置き方はしないでください。

 

骨まで柔らかく長時間かけて炊く料理なので、置き方が不安定だと

炊いているだけで煮崩れします。

 

とは言え、ご家庭で何日もかけて骨まで柔らかく、煮上げるのは

かなり至難の業でしょう。 

 

中骨は、食べる時に外して食べる、ぐらいの簡単な所から始めるのも

全然かまいません。

 

その時は、並べた秋刀魚に酒と味醂、濃口醤油を同じ量ぐらいで加え、

砂糖を加えて煮詰めます。 

 

沸騰するまでは中火で、その時に出て来る大きなアクは取り除きます。 

 

仕上げに山椒の実や針生姜を散らし、煮汁の濃度が高まりうっすらと

中まで味の浸透した秋刀魚に煮汁が絡んで丁度良いぐらいで仕上げます。 

 

煮汁が完全に秋刀魚の上まで回る様に、落し蓋をしたりキッチンペーパーを

落し蓋がわりに使うのも忘れずに。 

 

煮汁が少なめですから、時折鍋を優しくゆすって鍋底に秋刀魚が

焦げ付かない様に、注意してください。 

 

このケアは、たっぷりの煮汁の時にも大事な仕事です。

 

特に家庭用の鍋だと、厚みがなく火力の強弱が直接影響するので

我々でも難しい仕事です。

 

もし可能なら、厚手の高価な鍋をご使用ください。

 

その方が、全然仕事が捗りますから。 

 

さて、ご家庭用の辛煮でしたら以上の方法で、充分に美味しい秋刀魚の

煮物が完成します。

 

でも、我々が仕込むなら、こんな即席の辛煮では姿勢が問われます。 

 

では、どういう炊き方をするかと言うと、鍋にきっちりと並べたら、落し蓋をして

重石を載せます。 

 

これで蓋が浮いてこないで、秋刀魚が踊りません。 

 

我々が、こういう煮物をする時は、とにかく量が多いですから並べる秋刀魚も

1段では済みません。

 

何段かを重ねて並べる場合には、秋刀魚と秋刀魚の間に必ず針生姜・・

生姜の繊切を散らしながら並べます。

 

魚同士がくっついて皮がはがれてしまうのを防ぎながら風味を増す。

 

先人の知恵には、いつも頭が下がります。 

 

そして鍋にたっぷりの水を加えて、さらに3割ほどの酒を加えて少なくとも

1~2日かけて骨まで柔らかくします。

 

そこに、砂糖を加えて濃口醤油とたまり醤油をバランスを取りつつ

加えます。

 

醤油は、何回かに分けて入れますから一気に味を決めようと思わないで

大丈夫です。

 

鰯の辛煮の場合ですと、この前に酢水で茹でこぼす仕事を入れたりします。 

 

きつい脂を落として、酢の効果で骨を早く柔らかくするためです。

 

 

秋刀魚の場合でも、この手法を入れる職人もいますが、そこは好き好き。

 

武内の場合ですと、むしろ秋刀魚の場合は脂を残して、骨を柔らかくする

一工夫には、梅干しの種を最初から加えておく事が多いです。 

 

梅の酸味で、酢水で茹でこぼした時と似た効果がありますし、梅の酸味が

濃厚な煮汁に、さらに深みを与えてくれます。 

 

そして醤油を足しつつ、煮汁が殆どなくなるまで煮詰めて仕上げます。

 

仕上がる直前に味醂を加えて、味わいに深みと仕上がりの照りを

付けます。

 

最初の並べる時に生姜の繊切を入れていますから、最後の仕上げには

何も入れません。 

 

これでプロ仕様の、秋刀魚の辛煮が完成です。

 

 

この時間は、あくまでも少なくとも・・の時間で、たっぷりと時間をかける時には

柔らかくするのに3~4日、最後の仕上げにもまた1~2日と、気の長い仕事です。

 

その代り、贅沢に時間を使って仕上げた秋刀魚の辛煮は、極上の食感。

 

とろける脂の中に、ほろっと崩れる骨と身の味わいが楽しめます。 

 

と言う事で、本日は秋刀魚の辛煮をお伝えしました。

 

最初のご家庭用のやり方で、まずは試してみて、その後で時間の許す限り

骨を柔らかく仕上げてみては如何でしょう。

 

煮上げる時間は加える水の量で調整すれば良いです。 

 

骨を柔らかくするときには、最初の調味料で味醂を使わず、最後に加える。 

 

これは守って下さい。