鱧と松茸のお椀

特別コースのお椀に、とても安心の素材が使われています。

 

鱧と松茸。

 

秋と言えば、やはり松茸は外せない素材でして、しかも鱧の出汁と

組み合わせる事によって、さらに味わいが増し、美しい風味が楽しめます。

 

秋刀魚に大根おろし。

 

茄子には油や味噌。

 

鰻に山椒、麦飯にトロロ・・・と、二つの物を組み合わせる事により

ひとつずつの時よりも格段に旨味が増す。

抜群に風味が広がり、食感のコントラストも鮮やかに、栄養価や消化の部分でも効果がある。

 

伝統的な、ハイブリッド食文化。

 

こういう二つの食材を、「出会い物」と呼びます。

 

本日のお題、鱧と松茸も、この典型的な出会い物でして。

 

鱧の出汁に優しく包まれた松茸の香りが、それぞれを単独で味わう場合よりも、格段に中枢神経を刺激する。

 

日本人の感性、日本食を愛する者の本能に響く完成形となり得る訳です。

 

鱧の骨を炙り、熱湯を掛けて焼臭を除き、水から昆布を加えて鱧出汁をひきます。

 

鱧の出汁だけだと、しつこいので・・・と言うのは、職人にもよりますが、坐唯杏の場合だと鰹出汁で割って、調整しつつ酒と塩、淡口醤油で軽やかな吸物味に調えて。

 

さっと、この吸物出汁で火を通した松茸、鱧をお椀に決めたら、新しい吸物出汁を注ぐ。

 

結び三つ葉と、柚子を添えて・・・

 

と言うのが、樂旬堂・坐唯杏の仕立て方です。

この仕立て方で、土瓶蒸しも仕立てます。

 

土瓶蒸しの場合は、柚子を添えずに酢橘の半切りを添えて、吸い笠に熱々の出汁を注ぎ、酢橘を1滴垂らし、その香り、味わいを楽しむ。

 

いずれにしても、秋を代表する日本料理の一品は、こうして出来上がります。

 

他にも仕立て方としては、鱧に葛粉を打って使う場合や、1枚ずつ切り離して、わさっと盛り付ける。

 

また、焼いて細く割いた松茸を、鱧の上にこんもりと盛り付ける仕立て方等、色々な手法がありますが、坐唯杏の仕立て方が基本中の基本でして。

 

こういう仕事をきっちりと出来る職人が、枝葉の応用に挑戦する。

 

基本を知らずして、応用に走るのは根の浅い大木となる訳です。

 

と言う事で、秋の頃を存分に楽しむ一品。

 

鱧と松茸のお椀は、その年、その年で年に1回は味わいたい品です。

 

 

 

 


鱧と松茸、日本料理の世界では古くから、その組み合わせには一目、置かれるところでして、「出会い物」の代表のように、言われている組み合わせです。

 

名残の時期を迎えた鱧と、新物の松茸。

 

じっくり取った鱧の出汁に浮かぶ、松茸。

 

鱧の旨味と、松茸の香りが渾然となり、相乗効果によって、より旨いものへと進化を遂げる瞬間を、お椀の蓋を開ける時には体感できます。

 

武内が、板場の世界に入った頃から東京の料理屋でも鱧は案外とポピュラーになってきたかな・なんて感じます。

 

でも、武内が最初に、お世話になった丸の内の割烹、そこの親方は

典型的な関東の仕事をする親方でしたが、その親方も松茸の土瓶

蒸しには鱧を入れていましたし、高校を卒業してすぐにお世話に

なったホテルでも、鱧のコースなどを組んでいました。

 

だから、当初の武内の印象としては鱧は秋のもの・なんて言う

認識さえありました。

 

土瓶蒸しには鱧がつき物、厨房の世界に入ったばかりの武内でさえ

真っ先に覚えた組み合わせです。

 

まぁ、良く見かける大手チェーン店の土瓶蒸しや、パックの旅行で

夕飯に出てくるお椀には、鱧なんか絶対に入っていませんよね。

 

蒲鉾とか、まぁ銀杏、せいぜい三つ葉なんかが関の山でしょうが、

それでも、季節の高級な一品と言う認識の土瓶蒸しが味わえれば、

ありがたい思いも感じてしまいます。

 

と言うことで、鱧と松茸の組み合わせですが、その相性をトコトン

楽しむのであれば、鱧の出汁で仕立てるしゃぶしゃぶ。

 

その具材の一品として松茸を添えるのが1番かと、思います。

 

そんな料理を国産の松茸、瀬戸内の鱧で仕立てたら、1人前

幾らになるか、想像に難いですが、そんな料理も一生のうちに

一度は味わって頂きたい品であります。