木の芽焼

さて「木の芽焼」と言えば、坐唯杏では長年、メニューでお出しして

いる一品があります。

 

「筍の木の芽焼」

 

茹でた筍を酒と醤油の割醤油をかけながら焼いて、仕上がりに叩いた木の芽をまぶす料理です。

 

また、修行時代には、今の季節。

 

必ず、コースの中に入っていた焼物があります。 

 

「桜鯛の木の芽焼」 

 

 

 

5kgを超す様な天然物の大きな鯛を、何枚も卸して、毎日・毎日、百人前以上、ひたすら焼いていたのが懐かしい思い出です。 

 

さて、桜鯛と言い、筍と言い、木の芽焼には良く合う素材なんですがその仕立て方には若干の違いがあります。 

 

それは、筍みたいな淡白な素材には甘味の殆ど入らない割醤油でサッパリとした味付けで仕上げて、素材の味わいを前面に出す事。

 

鯛の様に旨味の強い素材なら、甘味の利いた焼タレを使い、素材の味わいに負けない味わいを添えると言う事。

 

最後にまぶす山椒の香りが、けっこう強烈なんで強い味付けが合う様に感じますが、割醤油だけのあっさりした味付けでもかなりイケます。

 

そして今回は、鰤を使った木の芽焼なんで、幽庵地と呼ばれる酒・味醂・濃口醤油を合わせたタレに漬けこんでから、さらに焼タレをかける。

 

 

そんな味の重ね方を採用しました。

 

タレ焼の基本の時にお伝えしたように、生の切り身に何もかけずに

焼始めて、表面が白く締まってからでは、タレの乗りが弱くなります。

 

幽庵地に漬けこむ事で、下味も入りつつタレの乗りも良くなると言う

一石二鳥の効果があります。

 

現在は、料理人の焼く技術が落ちていて、焼タレにコーンスターチや

片栗でとろみをつけて焼く・・・なんて事もあると聞いてます。

 

特に焼鳥屋なんかに多いみたいですが、本来の手法から言えば、

そんなタレは邪道です。

 

味醂と醤油の割合が6:4ぐらいが基本。

 

 

そして砂糖を控えめに使ったタレで、焼く技術だけで色を載せて味を載せて、そして照りを載せる。

 

それこそが焼く技術であり、そこが出来ないと完ぺきな木の芽焼にも

辿りつけない。

 

・・・と言う事で、なかなか「木の芽焼」なんて言う仕事には、お目に

掛かれないのかも知れません。

 

今の季節、

 

和食の仕事をやり続けてきた我々からすれば、木の芽焼みたいな

基本的な一品は、必ずお出ししたい。

 

そんな想いが詰まった一品であります。

 

焼きあげた焼物に、その場で叩いた山椒をまぶす。

 

仕立てている料理人にも、その香りが脳裏に刻まれます。

 

人間の脳の1番・深い所に影響するのは香りと言われてますから、

 

我々の頭の中にも、この季節・この香りと言うのが染み込んでいて、

この季節になると、どうしても山椒の芳香を欲するのかも・・・