視覚の涼 <蓴菜(じゅんさい)のお話>

蓴菜は、簡単に「順才」などと書いたりしますが、この字を書くのが我々の若い頃からの和食の世界での習慣です。

 

ヒツジクサ科の宿根草で、漢名で「蓴菜」、古くは「ぬなは」(沼縄の転)と呼んだとのことです。

 

言わずと知れた、水草中の珍味で古い池沼などに多く自生し、光沢のある葉を浮かべて可憐な紅色の花を覗かせたりします。

 

この食材の最大の特徴は、若い葉や芽にゼラチン質の粘液に包まれていること。

 

他の動物などから身を守る自然保護ですが、箸からするっと抜けていく蓴菜には大いに納得させられるところです。

 

 

 

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温故知新 <冷たい麺類のコツ>

武内の自宅には、昭和43年の「専門料理」と言う、我々プロが読む専門誌の古本があります。

 

温故知新、古い献立には、今もなお斬新な発想が発見されることがあり、事あるごとに書棚から取り出しては眺めています。

 

その中で、冷たい麺類の特集がありまして、今も主流の冷たい麺類が、すでにこの頃には確立されていた事に驚きます。

 

その特集で説いている、冷たい麺類のコツをお伝えしましょう。

 

極めて基本的な事ながら、あらためて納得する3点です。

 

一点目は、料理はもちろんのこと、器を冷やすこと。

 

 

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姑の知らない・・ 「真鯒(マゴチ)」のお話

鯒(こち)はコチ科の魚で非常に味わいが良いことで知られています。

 

ふぐの代用として認識される場合もありますから、推して知るべし。

 

引き締まった肉質と、豊富な旨味、美しい身質の高級魚です。

 

ただし、これは真鯒に限ったお話で、「鯒」と呼ばれる魚は、案外たくさんいます。

 

コチ類にも、マゴチ、メゴチ、イネゴチ。

ネズッポ類にも、ヌメリゴチ、ヨメゴチ。

 

この様に、コチ類以外のネズッポ類やノドグサリなども、コチとして認識される事があります。

 

地方名と標準和名の認識の差は、まだまだ多くて東京近辺、三崎などでもネズッポ類の魚をメゴチと呼ぶことがありますが、メゴチはコチ類の仲間でカサゴ目コチ科で、スズキ目ネズッポ科のネズッポとはまったくの別種です。

 

 

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逆転現象  「汐子」のお話

「汐子(しおこ)」は、カンパチの子供、幼魚です。

 

地方によっては、カンパチを出世魚として成長によって呼び名を変える所もありますが、一般的には汐子~カンパチで通用します。

 

カンパチの名は、目の所を通る暗い色の帯状の線があり、上から見ると漢数字の「八」に見える所から「間八(カンパチ)」と呼ばれます。

 

アジ科の中では最大の魚で体長は1.8メートル、体重は80㎏に至る大型魚です。

 

その味わいは、アジ科・ブリ属の中では最も美味とされています。

 

これは、サイズを問わず、我々料理人にも仲買にも一般的に認識されています。

 

と言う事で、カンパチの幼魚「汐子」についても、ある意味・・高級魚と言う認識があります。

 

 

 

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通称「バケ」 コシナガマグロのお話

通称「バケ」というのは、ある名の知れた魚に対して似てはいるけれど違う魚に使われる通称です。

 

名の知れた・・と言っても「イトヨリ」とか「メイタガレイ」に対してソコイトヨリやナガレメイタが「バケ」との事なので、一般の人には全く知られていない魚かもしれません。

 

そして鮪に対して「バケ」と言われるのが、この「コシナガマグロ」。

 

1mに満たない小型のマグロで、市場価値はさほど高くありません。

 

とは言え、その身質は本メジと言われる本マグロの幼魚と、ほぼ同じとされていて食べて、美味しい魚には間違いありません。

 

そして本日は、このコシナガマグロが入荷しています。

 

3~4日かけて、じっくりと売る素材として、安い価格で押さえました。

 

今後、鰹たたきにも転用しますが、ふだんより増量で提供させて頂くつもりです。

 

 

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