里芋土佐煮
<里芋剥き方>
包丁の仕事と言うのは一見、簡単な仕事、例えば同じ幅に
何かを切り付けるとか、同じ大きさや長さに揃えて切る・みたいな
仕事が1番、難しいんです。
慣れない人間がやると、見事にバラッバラになるんですよね。
そして、野菜の皮を剥く・・・なんて事も、この難しい仕事に含まれます。
剥いた面が段になる事なく、ぴたっと綺麗に揃ってて、まして切れる
包丁で剥いた面は、独特の艶さえ感じられます。
そう言う剥き方をすると、里芋なんかは柔らかく炊いても一切、煮崩れ
する事なく、綺麗に炊き上がるんです。
では、どうすればそう言う剥き方になるかと言えば、これはもう
訓練しかありません。
そして、その訓練の代表的な仕事が桂剥きなんですね。
大根を切り揃えた長さの幅で薄く・薄く剥いていく、刺身の妻に
するアレです。
桂剥きと言うのは左手の感覚で上の部分の厚さを感じて、右手の
親指の感覚で大根の下の部分の厚さを揃えます。
そして面を一定に保ちながら、包丁を上下に動かし、大根を回して
剥いていきます。
全ての基本が、この仕事に集約されているのです。
里芋の皮を剥くのは上手だけど、桂剥きは下手・・なんて事は
ありえませんし、もちろんの事、逆もないです。
包丁を使う方なら分かると思いますが、皮を剥く仕事の1番
重要なポイントは、面がぶれない事と、右手の親指の感覚で
厚さ(薄さ)を一定に保つ事です。
逆に言えば、この二点に集中すれば、野菜の皮剥きは一気に
上達します。
その為の近道、それが桂剥きなんです。
と言うことで、昨今の和食の料理界では桂剥きも満足に
出来ない職人が氾濫していまして、嘆かわしい事なんですが、
かく言う、武内も実はあまり上手な方ではなかったりして ><
桂剥きと言う仕事は、どんなに才能のある人間でも練習しなきゃ
出来ない仕事で、逆にどんなに才能の無い人間でも、練習すれば
必ず出来るようになるって言われてます。
まぁ、昔の人は良い言葉でモチベーションを上げてくれました。
二十歳頃、棲んでた四畳半・ひとまのアパートで夜な夜な、桂剥きを
練習した頃もありましたが、これがまた、やらなくなると一気に下手に
なる仕事でもあります。
今では、気合入れて桂剥きをする機会は、年に数回ですから、
腕が落ちるのも仕方ないですね。
と言うことで、最後は泣き言になってしまいましたが、本日は
野菜の剥き方、と言う話題をお伝えしました。
包丁の扱いが上手になりたい、なんて言う方は坐唯杏・本店、
カウンター席、武内の前へどうぞ。
ゆっくりお教えしますよ。